吉村昭『関東大震災』文春文庫。
関東大震災から丁度100年という区切りの年。我々日本人は、この100年の間に阪神淡路大震災、東日本大震災という2つの震災を経験している。日本列島が大陸のプレートの狭間に存在する以上、これからもこのような大震災を経験するのは間違いない。大切なことは震災への備えと心構えといざという時の知恵、情報であろう。
記録文学の第一人者である吉村昭の菊池寛賞受賞作。
少し前に読んだ江馬修の『羊の怒る時 関東大震災の三日間』では、当時の東京市とその近郊の混乱の状況が生々しく描かれていたが、本作では関東大震災の8年前の前震と思われる群発地震から震災当日からその後の状況までが、様々な視点で描かれている。
最近放映されたNHKスペシャルでも当時の大災害の様子がカラー映像で紹介されていたので、本作を読んでいると頭の中に映像が浮かんで来る。
関東大震災が起きる8年前の大正4年に大震災の前震と思われる群発地震が起きていたのは知らなかった。その群発地震を巡り、当時の地震学者が大地震の予兆か否かで議論しているのも興味深い。
東日本大震災の時も2日前の昼前にM7.3の大きな地震があり、それ以降M6クラスの地震が何度も発生していたことを覚えている。しかし、この時の群発地震が東日本大震災につながることを注意喚起した学者は居なかった。今の科学では地震を予知することは出来ないというのが定説である。
今から100年前の大正12年9月1日、午前11時58分に相模湾を震源とするM6.9の大きな地震が関東地方を襲う。多くの建物が倒壊し、直後に発生した大火災は東京や横浜を焼き尽くし、20万人にも上る多くの死者を出した。中でも最も悲惨な出来事は、大火災は火災旋風を巻き起こし、本所被服廠跡地で3万8千人もの人びとの命を奪ったことだろう。
こうした中、再び大地震が来るとか、大津波が来るなどといった流言が飛び交う。さらには朝鮮人が火を放っている、井戸に毒を入れているなどという流言蜚語は、朝鮮人の虐殺という悲劇を生み出す。
本体価格770円
★★★★
- 感想投稿日 : 2023年9月14日
- 読了日 : 2023年9月14日
- 本棚登録日 : 2023年9月12日
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