ファイアーウォール 上 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2012年9月22日発売)
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本棚登録 : 278
感想 : 26
5

ヴァランダー・シリーズの邦訳8作目。創元推理文庫というとマニアックなイメージが強く、自分には敷居が高く、手を出しにくかったのだが、そのイメージを打ち破ったのがヴァランダー・シリーズであった。以前からこのシリーズはスウェーデン版のハリー・ボッシュ・シリーズではないかと思っている。ミステリーと併せてヴァランダーが孤軍奮闘するハードボイルドな香りがハリー・ボッシュ・シリーズに似ている。

最初は『ファイアウォール』というタイトルが昔気質のヴァランダーと結び付かず、面食らった。また、この上巻の前半で描かれる事件も大して大きな事件とも思えず、ヴァランダーが過去の亡霊と向き合うスローな展開が続き、警察組織のゴタゴタが描かれるだけかと高を括っていた。しかし、二人の少女によるタクシー運転手殺害事件のとITコンサルタント変死事件とがシンクロし、いよいよタイトルと結び付く展開が始まると物語は俄然面白くなる。そして、冒頭からのスローな展開の全てが作者の仕掛けた罠だったことに気付き、二重に驚かされる。

結末の断片が少し見え始めたばかりの上巻。果たして真実は如何に。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外
感想投稿日 : 2016年8月28日
読了日 : 2016年8月28日
本棚登録日 : 2016年8月27日

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