田中康弘『山怪 弐 山人が語る不思議な話』ヤマケイ文庫。
今月のヤマケイ文庫は、山の不思議を集めた作品が3冊も同時刊行と何とも贅沢。
『山怪』の第2弾。今回も数ページの山と山里の怪異掌編が多数収録されている。事件の現場となった山に見る幽霊、火の玉に狐火に、山中で聞こえる謎の声、狸や狐に化かされた人、大蛇に座敷わらしにヒバゴン。山と山里は怪異や不思議の宝庫なのだ。
似たような話が多数並ぶ。多くの怪異は田舎の噂話が人から人へと伝聞されて、地理的範囲も次第に拡がっているのではなかろうか。例えば本作に収録されている『ミミズ素麺』。岩手県南でも似たような話を聞いたことがある。ある日、山里の集落で酒を伴う寄り合いがあった。寄り合いも終わり、御開きになるが、一人の呑兵衛爺さんがなかなか家に帰って来ない。心配した家人が探しに行くと、爺さんは田んぼの中に座り込み、何やら話ながら泥団子を食べていたという。狸か狐に化かされたのだろう。おっと、この逸話は前作のレビューにも書いていた。
座敷わらしなどは、岩手県遠野市や二戸市の金田一温泉が有名だし、エクソシストや祈祷師の話なども、同じ岩手県南の一部の地域には、今でも悪魔祓いという風習が残っているし、よくぞ似たような話が全国各地にあるものだと思う。
本体価格800円
★★★★
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本
- 感想投稿日 : 2020年7月12日
- 読了日 : 2020年7月12日
- 本棚登録日 : 2020年7月11日
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