表紙のふわふわとした柔らかいイメージとは違い、内容は古典文学や研究資料などを用いての、現実的な目線での語り口で書かれている。
子どもや孫に囲まれた幸せな老後イメージは多くの人が持っているのではないだろうか。
現代人の荒んだ心とは違い、昔の人は老人を大切に扱ったはずだと、半ば無意識に思い込んでいたのは私だけではないはずだ。
しかし本書にある、それとはかけ離れた老人たちの現実に打ちのめされた。
縄文時代という大昔、埋葬の仕方が他の若い人に比べて簡素である。
という下りから始まり、結婚できると言うこと自体がステータスであること。
平均寿命は低くい時代であっても長命な人も多かったこと。
運良く結婚できたとしても、歳を取れば家庭の中で孤立し、老人遺棄も当然の事としてありえた社会であったこと。そして殺されることも。
一番ショックだったのは自殺率。
老後問題は何も今に始まった事ではないのだ。
社会的弱者で被害者になりやすく、また加害者にもなる老人。
なのに、そういう老人がなぜ物語に多く登場することになるのか。
それは厳しい現実から出た希望であったり、または老人の持つ特殊性(知性や醜さ)により話を展開させる者として使われたり。
パターンとしては幾つか挙げられているが、やはり弱者であるが故という感は拭えない。
私のように、表紙だけ見て何も考えずフワフワした気持ちで読み始めると痛いめに合う。表紙のと中身のギャップは激しい本。
もちろんそれだけではなくて、面白いところや笑えるところもあった、私にはショックなところがより心に残ったというだけだろう。
ただ、読んで良かったと思う。
日本という国の歴史を見る上での、違った視点を教えてもらった。そして今のこの社会のありがたさも。
そして、そんな厳しい社会の中でもたくましく生きていた老人ももちろんいて、最終章の「イカス老人」では心が救われる思いがした。
厳しい社会であるが故の潔さというか、美しいものはより美しく見えるのかもしれないなどと思う。
時代を物語を老人に注目して見てみる。
そういう今までにない面白い視点をこの本はくれる。
- 感想投稿日 : 2020年8月21日
- 読了日 : 2020年8月21日
- 本棚登録日 : 2020年8月14日
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