表紙がイロモノ感を出しすぎて損してる本。
2作目の逆襲から手を付けてしまったが、当時は衝撃すぎた。役員会の発言とか、これほどまでに事実のごとく説得力を描き出せるものなのか。
今でこそ自動車業界は大戦国時代だと誰も疑わないだろうが、2015年頃まではトヨタの敵がGAFAだとか、CASEだかMaaSだかお洒落なアルファベット4文字はお腹いっぱいムードが漂っていた。またまた、そうは言っても製造業は強いよね、とタカを括っていた1人だ。
しかし一国の大名にしてみたら、見通している先が町民のそれとはケタ違い。この作品のおかげで、その才には素直に感じ入った。
愛国的なストーリーとは対照的に、下請けに対するアコギなやり口が鮮明に描かれ、大企業の風刺も忘れていない。日ごろ憤懣を募らせている人にとって溜飲が下がる思いもあるのではないか。
昨今は製造ヒエラルキーのあり方すら問題視され、産業構造そのものの見直しが迫られている。ただ、それを誰がやるのか。プレーヤーはいるのにアンパイアは不在。省庁も経団連も、自ら作ったルールにがんじがらめと聞く。
プレーヤーは、そうは言ってもね、といつまで言い続けられるだろうか。
問題提起が多く心に残る良作。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2023年9月13日
- 読了日 : 2022年7月12日
- 本棚登録日 : 2022年7月12日
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