海外ファンタジー。同名のアンデルセン童話がベースになっているそうだがそちらも読んでみたらこの話、大まかな設定以外は8割方作者の創作だった。
舞台は三十年戦争(1618~48)頃、欧州北部のどこか。主人公の若い兵士が戦場から始まり、運命に導かれるまま、いくつもの不思議な出会いと冒険を重ねてゆく様を彼の一人称で描いているが、(そういえばこの話絵がすごく多い。ほぼ全ページイラスト入りで文字も横書き、デザインにとてもこだわっている)全編を通して強い印象を残すのは冒険の行方よりも繰り返される喪失の哀しみ、そして苦痛。
主人公はまだ兵士でなかった頃、彼がただの、どこにでもいる幸せな少年だった頃がどうしても忘れられない。どれだけ奇妙なものを見聞きしても、命の危険に晒されても、危機を乗り越え功成り名遂げ、互いに心惹かれる美しい女性に巡り会ってすら、彼の目の前で突然襲われ、辱められ、虐殺されていった彼の家族が忘れられない。夜ごと訪れる過去の夢。懐かしい父母の姿、兄姉の声。…その死に様。
尽きることのない愛しさと幸せの記憶は、そのままただ一人生き残ってしまった元少年である兵士の、声にならない嘆きに繋がる。
夢と現。繰り返し繰り返し、決して消えない哀しみと苦痛。
そして全ては振り出しに戻る。
読みながら、この話にはPhamie Gow (ファミー・ゴウ)の「Carousel」が合うのでは…と思って、動画サイトで検索してみたら、本当にピッタリだった。
イメージソングとかイメージ何とかは物凄く好き嫌いがハッキリするし、実際普段こんな事はしないけど、まあ自分への備忘録も兼ねて、末尾にアドレスを記しておく。
https://www.youtube.com/watch?v=x--SEvwLEN0
(公式が投稿したらしいので、多分大丈夫でしょう)
- 感想投稿日 : 2016年6月11日
- 読了日 : 2016年3月15日
- 本棚登録日 : 2016年3月15日
みんなの感想をみる