第169回芥川賞候補作品。
著者は先天性ミオパチーによる症候性側弯症で人工呼吸器使用・電動車椅子当事者。
この小説、著者の言を借りれば、
ーめちゃくちゃ刺激的なやつ。
見えている世界がひっくり返るくらいの、ね――。
主人公・井沢釈華は、先天性の疾患のため、電動車椅子と人工呼吸器を使いグループホームで暮らしている。コタツ記事や18禁TL小説をサイトに投稿し、「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」とツイートし、妊娠して中絶したい、と切望する。
ヘルパーにページをめくってもらわないと読書ができない紙の本は不便。だから、「紙の匂いが好き」とか「ページをめくる感触が好き」などと宣い電子書籍を貶める健常者は呑気でいい、という。
言われてみれば、ほんとだよね。
そういえば、こないだも、「車いすの使用者が電車に乗る時は、乗降を手伝ってくれる駅員に感謝すべき」っていうような意見をTwitterで見たな…
こういうのを、健常者優位主義っていうんですかね。
みんな、たまには見えている世界をひっくり返した方がいいんだよ。
だから、おすすめします。
短いし、多少激しいエロはあるが読みやすい。
《7月23日追記》
この作品に盛り込まれている著者自身の経験は30%ほどなのだという。
「私は当事者を代表はできないですけれども、当事者表象がいろんな形で増えることは必要だと思っています。1つの例として、私のことばを小説に刻みつけていくことは大事だと思います。私も含めて障害者は社会の一員ですから、障害者を含めた社会はよくなっていってもらいたいと思っています。そのヒントになればいいと思います」と受賞後市川さんは語っている。
《8月5日追記》
ー 健常者の無知な傲慢暴く
日経書評のタイトルが本書の内容をわかりやすく示している。
- 感想投稿日 : 2023年7月16日
- 読了日 : 2023年7月13日
- 本棚登録日 : 2023年7月13日
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