色覚の検査、小学校の頃にやった記憶がある。
結果、「異常」の可能性ありと判定されたクラスメイトがいたことを覚えている。
たぶん、僕は、色がわからないことがどういうことか理解ができず、興味本位で彼に質問しただろう。どんな風に色が見えるのかを。
彼はニコニコしてあまり気にしていない風だった記憶がある。でも、心ではどう思っていたのだろう。
今から考えると、みんなの前で色覚について正常か異常かを診断する差別的な検査だった。
しかも「色覚異常」に治療法はないときている。
「色覚異常」が遺伝性のため結婚について注意を促したり、就ける職業を制限したりするための検査。
なんのために、そんな重荷を小学生に負わせなければならなかったのか?
この本は、「色覚異常」がはたして「異常」なのことなのか?を問う書だ。
人が色をどう認知するのか、わかりやすく掘り下げていく。そうした中で、色覚に関しては決して「異常」があるわけではなく、連続しており、多様であり、広い分布があるもの、と認識に至れる。
そして、たとえ色覚の認識が弱かったとしても、みんな自分の持っている感覚を総動員して生きているわけで、1つの感覚の性能のみで全体を語るのには慎重でなくてはならない。
ただし、カラーユニバーサルデザインについてはしっかり環境を整備する必要がある。未だに黒板に赤いチョークを使う教師がいるらしい(ほんとか?)。誰もが認識しやすい色を用いることを心がけることは重要なことだ。
光そのものに色はついていない。絶対的な色なんてない。光をどう捉えるか、ただそれだけだ。
つまり、人によって無数の色認識がある。
たぶん、僕とあなたの色認識は違う。
僕が見える色は僕オリジナルのもの。
そう考えると、日常の何でもない風景の色が、とんでもなく愛おしくかけがえのないものに見えてくる。
発見がとても多い本なので、ぜひ皆さんに読んでほしい。
- 感想投稿日 : 2021年6月13日
- 読了日 : 2021年6月9日
- 本棚登録日 : 2021年6月9日
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