武士道 (岩波文庫 青118-1)

制作 : 矢内原忠雄訳 
  • 岩波書店 (1938年10月15日発売)
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感想 : 319
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武士道はその表徴たる桜花と同じく、日本の土地に固有の花である。

内容的には、綺麗に整理されており、順々に体系的に説明されている。西洋社会が自分のみを正しいとし、日本を文化も宗教もないと判じることに堂々と反論を唱える一冊である。切腹するが、無駄死をよしとせず。入浴の習慣はあるが貞操が武士の夫人の徳であり懐剣を持ち歩くなど、いちいち誤解を招きがちな点を言明してくれている。しかし、期待したほどに、武士のかっこよさは伝わらなかったのが少し残念である。

私の家は、上級士族の家系である。
この本の項目に「武士の教育」という項目と克己という項目があり、「金銭を卑しいものとする」と「感情を表情に出すことは男らしくない」といった内容があるが、まさに大正元年生まれの祖母がそう躾られたと聞いていたので、我が家系ながら少し驚いた。

また、彼は1862年の江戸時代末期の生まれで、8歳の時に廃藩置県、13歳の時に廃刀令が出たことに注目したい。なぜかというと、途中にある婦人の教育と地位の項目においては歯切れが悪い。お茶くみを嫌に思い前職を辞した私の様な現代に生きる女子が読むと若干腹立たしい内容である。
私は江戸時代が最も武士の妻の地位が下げられた時代だと思っているので、その影響下に生を受けたためだと思う。

最後の武士道の今後を論じる章は、少し寂しい。5千円札からはなぜか消えてしまったが、彼が本著を記したことで、武士道が消えなかった功績は大きいと思う。
なお、武士道については、桜のごとく体系としては散ってしまっても香りは残るであろうとしめくくってある。

観念的でやはり難しい点も多く、いずれまた読み直してみたいと思う一冊であった。なお、外人による緒言は読む気が失せる読みにくさで、読まないことを勧める。また五輪書と違い、「the soul of japan」の英語の原文タイトルも素晴らしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 純文学
感想投稿日 : 2015年5月28日
読了日 : 2015年5月28日
本棚登録日 : 2015年5月28日

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