素顔の伊達政宗~「筆まめ」戦国大名の生き様 (歴史新書)

著者 :
  • 洋泉社 (2012年2月6日発売)
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感想 : 9
3

勇将のイメージがあったのだけれど、政宗の筆まめさ、そしてその手紙の素直さや、戦勝報告を自慢するかわいさが魅力的。

追伸が多い方なので、私と一緒で、あ、忘れてたが多い、かわいい人なのかなと親近感(笑)

責められている味方に対して、援護品を送ったが連絡がないので心配だ、とか、相手方からの工作が来ても私が直筆の手紙で必ず保証した様によく扱う、約束は守ると述べている誠意のある態度とか、それでも相手の気持ちも考えて、信用しているので安心ししていると追伸で述べているところとかもとってもキュートで人間味あふれている。

お酒が大好きで、たまに飲みすぎて、粗相をしてしまった部下に対して、ごめんねと謝りの手紙を出したり、嫁いだ娘へも、昨日場を盛り上げようとしてお酒を飲んで、二日酔いでまとまらない文章でごめんねと謝っていたり、人間らしさもとっても好感。

何かに不安を感じて、正月の祝い魚である鱈が出回らないのを気にかけて、ただただ命令するのではなく、漁師に安心して商いをするように伝えよと手紙を部下に送っていたり、細やかな気配りができる人でもある。他にも逼迫した藩の財政を何とかするために考えた案もおしつけるのではなく、部下に意見を言うようにとの手紙を送っている。

家康とか、実際の気持ちは分からないけれど、子供を簡単に見殺しにしたりしているように思え、戦国時代は親子の情愛は薄いイメージがあった。政宗が嫁いだむう姫に出した直筆の手紙の数も300通を超えていたり、離婚した五郎八姫を手元に引き取るときに、色々してあげたいので自分が仙台にいる間にしてほしいと母親に手紙を書いていたりと優しさが垣間見える。

若干18歳で家督を継いだ政宗。将来が不安であり、人の事に口をはさめる身分ではないと断りながら、自分より先にできた後継ぎを殺めようとする忠臣を諌めるとこなども、優しくて好感です。とにかく、殺めたりするなと繰り返し書いてあり、その必死な感じに誠意を感じた。

遺品の中から、筆が納められた筆箱なども出てきたことなども書かれており、興味深かったです。

手紙を通して、生まれるのが少し遅く、戦乱の世が安定期へ移りつつあり、戦いを挑む機会さえ与えられなかった政宗。
乾坤一擲で戦い一花咲かせて散るか、現実を見極め秀吉に屈服するか正直に家臣に伝え悩む様子など、彼の夢への挫折が感じ取られて、切なくなる。
実力が伴う人が、挑むことも許されず、諦める事は
非常に辛いことだったでしょう。

文化も豊かで、教養も高い政宗は、それでもなお人に誠意を尽くせる人で、素敵な人だったんだなと思います。
ユーモアに富んで部下と遊べる懐に余裕もあり、直筆の手紙をもらうと素直に喜ぶかわいらしさもある人。
魅力的に描かれていました。

あとがきで書かれている様に、政宗の魅力は「行き先の見えない不安な時代。自分の可能性を信じ、自由な意思と決断で前途を切り開き、夢に向かって突き進んだ」だと私も思いました。

辞世の句の解釈
何も見えない真っ暗闇の中で、月の光を頼りに道を進むように、戦国の先の見えない時代の趨勢を 自分が信じた道を頼りにただひたすら歩いてきた一生であったなあ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2014年12月16日
読了日 : 2014年12月20日
本棚登録日 : 2014年12月16日

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