格差社会: 何が問題なのか (岩波新書 新赤版 1033)

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  • 岩波書店 (2006年9月20日発売)
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継続的な経済低迷は人々の不安や閉塞感を生み出し、政府の政策効果を薄め、利益の減った企業は非正規雇用の拡大を進めるなど雇用システムの変化をもたらした。

日本の雇用システムの3本柱
年功賃金制度
長期雇用制度
企業別組合

これらの雇用システムは正社員の安心な生活をサポートし、政府にとっても支出する社会保障の負担額が少なくなる(勤続年数に応じて給与が上がり、セーフティーネットの支出が少なくて済む)などメリットがある一方で、非正規雇用者はその雇用システムの恩恵を受けることができず、賃金が低くなるばかりか、公的援助も少ない現実がある。これは、専業主婦や学生アルバイトを前提とした制度設計になってることが背景にあるが、今正社員である人も万が一倒産などでその枠を外れると厳しい状況に陥るということである。不景気が継続すれば、次世代にわたって機会の平等が奪われてしまい、一度落ちたら這い上がれない社会になってしまう、というより昔からそう言う事実はあるのだろうが、日本はさらにそういった傾向が拡大しているらしい。その結果、拡大自殺と言った犯罪が増え、さらにはこうした不遇な人たちの救済のため、社会の負担も増えることになる。格差の拡大が閉塞感や不安を生み、新たな需要を生み出しにくくするなど、政策が空回りする原因になっていると思う。筆者が挙げる、変えるべき現行制度は以下。

国民年金に累進性を導入(今は一律で逆進性があり、多くの税金が充てられている)
雇用保険の用途見直し(失業した人の給付のみに絞る)
同一労働同一賃金(職務給制度)
最低賃金の改善(モデルケースで生活保護より月収が少なくなる場合がある)
奨学金制度の拡充

継続的なデフレの悪循環からの脱却が鍵であると思う。まずはとにかく利益。

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感想投稿日 : 2022年1月19日
本棚登録日 : 2022年1月16日

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