ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部: 舞台脚本 愛蔵版
- Pottermore Publishing (2017年12月1日発売)
続編としてすごくよかった。
ある意味前作までのハリーの問題点を指摘している感じ。
ハリーポッターシリーズ(7作目まで)は、ハリーが自分の宿命に立ち向かって自分の問題を解消する話。彼はある意味分かりやすく孤独で英雄で、どこまでも主人公だった。
一方、親となったハリーが、今度は我が子アルバスを主役として、息子が抱える問題と物語を見極めて、それを受け入れたり背中を押したりする必要が出てくるのが今作。
でもハリーはそれが理解できない、上手くできないというところから始まるのが「呪いの子」。
メタ的な視点から言えば、ハリーポッターシリーズは善悪が明確すぎるほど明確だった。グリフィンドールは常に善であり、スリザリンは常に悪だと描写されていた。そして善と悪の戦いのドラマにおいて、ハリーは主人公であるが故に生き残り、他の多くの脇役の人々は亡くなっていった。
そうした、主人公を中心としたある種の独善性についても「呪いの子」は問いかけ直している。スリザリン生となったアルバスや、セドリックの父エイモスの存在を通して。
特にハリーとアルバスの対比が良くて好き。
アルバスはハリーより平凡な分複雑で、ハリーが両親が「いない」ことに苦しむのに対して、アルバスは両親が「いる」ことで苦しんでいる。
ハリーは自分の宿命が「ある」ことに苦しみ、アルバスは「ない」ことが苦しい。
ハリーはアイデンティティが「揺らぎ」悩むけど、アルバスは「悟りすぎ」ている。
そしてハリーは敵を打ち破り世界を「変化」させたのに対し、アルバスは敵は倒したけど結果的には世界を「元に戻した」。
読者はどちらかと言ったらアルバスに近いはずで、ハリーみたいな宿命や英雄的行動に憧れはすれど、現実ではそんなものはあまりない。
だからアルバスが自分から物語を見つけ出して行動しなければならなかった必然性が理解できるし、冒険を経て、世界を大きく変化させたり世間に賞賛されたりする英雄になることは難しくても、何かを達成して自分を見直すことができた喜びが分かる。
そこが続編として、今までのストーリーを踏まえながらも別の感覚を味わえたので良かった。
冒険のワクワク感、伏線回収、キャラクターの掛け合いの楽しさは変わっていなくて懐かしかった。
ハリーポッターシリーズを読んで大人になって、この続編を読めて良かったなと思った。
- 感想投稿日 : 2024年3月13日
- 読了日 : 2024年1月1日
- 本棚登録日 : 2024年3月12日
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