ぼくは川のように話す

  • 偕成社 (2021年7月12日発売)
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感想 : 80

養老孟司さんがテレビ番組でこのようなことを仰っていた。
「言葉は、なかなか出てこないのが普通なの。ぼくみたいに、スラスラと出てくるほうが異常なの」
吃音のことを言ったのではないだろうが、この言葉に、言葉がなかなか出てこないときもあり、言い間違いも多い自分がどんなに救われたか。

この絵本の主人公のジョーダンは吃音で、言葉がなかなか出てこない。
たぶん、頭の中ではスラスラと言葉を喋れているんだろう。
それなのに、言葉が脳から出て、喉を通り、口に出すと、全然うまくいかない。
その絶望を、朝起きたときの瞳のアップの絵からひしひしと感じる。
学校では、話すと笑われ、馬鹿にされるから、必要なとき以外はいつもだんまり。
そんなジョーダンの絶望を希望に変えたのは、父親の「言葉」だった―――。

ジョーダンは「言葉」によって苦しめられ、「言葉」によって希望を見出だし、詩人という「言葉」を使う人になった。

お父さんの『ほら、川を見てみろ。あれが、おまえの話し方だ』という「言葉」で、目の前で広がる大自然の川の風景と、自分のありのままの姿が一体となって、「自然がこのままで美しいんだから、ぼくもこのままの喋り方でも美しいのだ」と、「受容」ができたんだと思う。

コンプレックスを抱えるすべての人に読んでほしい一冊。

ご紹介くださったやまさんはじめフォロワーの皆さん、ありがとうございました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2022年3月19日
読了日 : 2022年3月19日
本棚登録日 : 2021年8月9日

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