浮雲 (岩波文庫 緑 7-1)

  • 岩波書店 (2004年10月15日発売)
3.37
  • (10)
  • (45)
  • (73)
  • (8)
  • (3)
本棚登録 : 525
感想 : 56
3

言葉は今とさほど変わらずも、時代背景が全く違うために、註釈を読まないと書いてある意味が汲み取れない。夥しい量の註釈だけでは足りぬ故に辞書で調べネットで検索しながらようやっと読了。
内海文三の気弱さに若干苛々させられつつも、夢に溢れて前しか視ないというイメージの明治人の中にも文三のような人間が存在していたのかと少し意外さを覚えた。
解説にもあるように、学問への打ち込みと良識だけで生きてきた文三は、結局、口先の巧みさで上り詰めてきたチンピラのような本田昇に悉く負かされてしまう。今の社会でもそれは同じ。そしてその社会の有り様を批判すべく筆を執ったらしいが、二葉亭四迷自身が深みにはまったのか、なんなのかで、結局完結する事なく終わらされてしまったらしい。
明治の当時においてであれば、その警告なり批判なりも新鮮に映ったろうが、今の社会ではその社会問題ももはや誰もが認めるところであり、ゆえに消化不良感が大きい。尾崎紅葉の金色夜叉然り。モヤモヤだけが残る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 岩波文庫(緑)1927
感想投稿日 : 2020年6月9日
読了日 : 2020年6月9日
本棚登録日 : 2020年3月25日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする