あとがきに書かれていることが全てのような気がする。幾多の小説家がもがき苦しんで限界に挑みながら到達しようとした目標も、結局はその時代に翻弄されたことで生まれた虚像に過ぎず、従って当時の文学を読み直したところで現代に生きる我々が指針とすべきものは何ら見つからない。
産業革命を経て帝国主義化した西欧列強による植民地化から身を躱す手段として自らが西欧列強に倣うことを選んだ当時の日本は、結局猿真似をしていただけで中身は何一つ変わらなかったばかりか、そのリバウンドが人々の生活に暗い影を落とし社会の様相が一変した。その影を今以てなおも引き摺っているのが現代人である我々であり、小説の発展に命を賭した文豪や小作家たちの夢はそういう意味ではまだ何一つ実現せられていない。
結局、小説を読み直すことは日本という一個の国がもがき苦しんできた過程を見つめ直すことに他ならず、今後日本をどう変えていくかはとどのつまり現代人の課題であるということ。気が重くなった。
Wikipediaでみたのかこの本でみたのか最早思い出せないが、小説は小編言説の略らしい。物語とは区別せらるべきものであると。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
岩波新書(緑)1949
- 感想投稿日 : 2022年11月23日
- 読了日 : 2022年11月23日
- 本棚登録日 : 2022年11月12日
みんなの感想をみる