「家族」や市井の人々の日常を描くことに定評があるアン・タイラーの1982年の作品。
学生時代、英文学の授業に苦手意識があり長らく手にしていなかったのですが、中野恵津子さんの翻訳のおかげで、年齢を重ねた今読んでよかった1冊でした。
1960年代のボルティモアに住む家族が舞台です。
同じ屋根の下で出来事を共有するのが家族ですが、それぞれの視点・感じ方により、これほどの齟齬があるのかという現実がさらりと描かれます。
いつの世も、いずこも「家族」は難しいなあとしみじみ。
善い人・悪い人という紋切り型の人物像ではなく、登場人物の家族それぞれと適度な距離を保ちつつ、淡々と描かれます。
各章ごとに誰の視点で出来事を見ているのかが異なり、「事実」は1つでも「真実」は人による捉え方だから異なること前提で生きていくことが大事かなと感じました。
心の底から求めている「大事な人」からの承認や肯定が得られないとき、人はこういう行動をとってしまうものだなとつくづく…。
自分の心と向き合うことはとても勇気がいるのだなと自分を見つめるいい機会になりました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年12月16日
- 読了日 : 2023年12月15日
- 本棚登録日 : 2023年9月30日
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