芸術家 岡本太郎さんの実母である岡本かの子さんの作品。初出は1939年ですがkindleで青空文庫の作品として無料でダウンロードできました。
彼女の「いろいろあった」生きざまにとても興味があります。
紙の本は馴染み深いのですが、kindleで絶版となるような作品を安価あるいは幸運にも無料で読む機会を得られるのは本当に有り難いことです。
本作は大きな仕掛けや展開があるわけではなく、鮨屋の娘である「ともよ」の目から見た世界が淡々と広がります。まるで映像の世界で親の商売や学校、大人の雰囲気を覗き込むような感覚。
次第に話題は店にたまに姿を見せる男性客である湊氏の生い立ちに焦点が絞られていきます。湊氏が語る自らの家族の風景。鮨との邂逅。
俯瞰した視点ながら風景や人々の営み、家族という器の中でのやり取りや心の機微がふわりと浮き立つのがとても興味深い作品でした。
昔の作品は何か古臭かったり、当時の価値観を受け入れ難かったりという思い込みがありますが、人の本質はさほど変わってはいないのではと、自分が年齢を重ねたからこそ思うようになってきました。
違いこそ面白がって読み、変わらぬ本質的な部分に関しては納得。そう思うと実はクラッシックはもっと光を当ててもよいのではないかな。
有吉佐和子さんの作品をきっかけに昭和の作家の作品に出逢えて豊かな時間を過ごすことができています。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年3月2日
- 読了日 : 2022年3月1日
- 本棚登録日 : 2022年3月1日
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