富士 (中公文庫 た 13-1)

著者 :
  • 中央公論新社 (1973年8月10日発売)
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感想 : 26
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精神科の先生ではないようで、確かに内容からも伝わってくる。疾患へのイメージなどもすこし大雑把

精神病院における医師と患者の立場の逆転とはまた怖い発想だ。時間が経てば退院する患者と違って医師は生涯を病院で過ごす。また社会のあらゆる制約に縛られない精神患者と違い、精神科医を縛るものは法律やら規範やら数多い。確かに患者の側が怯える医師を観察しているという表現もなるほど一理がある。拘束の権利を与えられているのはその立場の弱さゆえかもしれない。
この立場の逆転の考え方は辻仁成の海峡の光、吉村昭の破獄で学んだもの


神と選ばれたる民
神は恵みの神、救いの神でありつつ、また怒りの神、抹殺の神でもありうるという運命をもつ
脳が脳を裁く
優しさという拘束具
各行の最初の文字に必ず漢字をえらんでいるのはてんかん病患者特有の傾向
患者をつくりかえる「神の指」となり、患者をおびきよせる「神の餌」をばらまかねばならないのだ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年9月10日
読了日 : 2022年9月9日
本棚登録日 : 2022年9月10日

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