ケイタは偶然白い携帯電話を拾う。興味本位で友人と一緒に中身を見ると、データフォルダに凄惨な女性の死体の写真が納められていた。非日常な展開に戦慄するケイタであったが、その先に待ち受けるものはそれ以上の狂気を孕んでいた…。
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今年一番最初の読了ツイートはこちら。昨年から何冊か読んでいる二宮敦人さんの短編集。アルファポリスから出版されたとのことなので、おそらく一度Web小説としてサイトに掲載されていたのだろうと思われる。 暗闇の中に浮かび上がる充血した眼球上に突き刺さるようにして浮かぶ逆さまの水滴模様。
なんともグロテスクな感嘆符である。表紙からすでにグロテスクだぜ!という感じ。全3編からなる短編集のこちらは、読んでみると確かにグロテスク。グロテスクなのだが、やっぱり謎の気軽さがあってサクサク読める。 起こっていることはかなり深刻だし、怖い。 特に一番最初の「クラスメイト」は、何気なく拾った携帯電話から始まる恐怖の日々なのである。何気なく拾った写真に写っていた女性の死体。しかも、そこにうつっていたのは自分がグループでつるんでいた女の子であり、友人の彼女なのだ。
さらに、写真に写っている友人の殺され方は尋常でなく、鈍器に近い刃物で滅多打ちにされていて、顔がついていなければ、誰ともわからない、それぐらい酷い有様。それをわざわざ写真に撮り持ち歩こうとしていた犯人の異常性。その携帯電話に記録されている自分たちの連絡先。どう考えても戦慄する。自分や身の回りにすでに起きてしまった惨劇と、今から起こることが分かっている惨劇。どれをとっても怖すぎる。前も言ったが、読んでいる途中はどうしようもなく恐ろしかった。でも最後まで読み終えると、どうしても納得してしまう。不思議だ。
以前この作者が書いた「文藝モンスター」に出た雨漏というホラー作家が言っていた分からないから怖い。だから、理解できれば怖くない。という理屈に似ているのかもしれない。 確かに、私が好んで読むホラー小説は真実があまり語られず、語られたとしても最小限でかつ意味不明であることが多い。説明されたとして到底納得できないような内容ばかりなのだ。だからいつまでも理不尽さを感じ、読了後のもやもやをいつまでも抱えて消化不良のような気分になるのだ。だが、この作者の書く本は最後の最後に読者が抱える負の感情を、作品の面白さを損なわない形で、説明し清算してくれている(と私は感じている)。だから、読み終えた後に後味が悪かろうが、酷かろうが、すっきりするのだ。 おそらく。たぶん。 読んでいる途中の怖さ、気持ち悪さをすっかり無くしてくれる、この爽快感が今癖になっているのかもしれない。 内容はグロテスクで陰惨で、悲劇的なため、絶対読んで欲しいという勧め方ができないのが残念だが、興味がある人は読んでみてほしい一冊だった。
- 感想投稿日 : 2023年9月24日
- 読了日 : 2023年1月1日
- 本棚登録日 : 2023年9月24日
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