一人称の出てこない徹底した主観ながら、目線の優しさから偏った思考や不快感を催さないという、不思議な文章。落ち着いた読書を楽しみたい時には、どうも小沼丹か野呂邦暢を選んでしまいます。
『木菟燈籠』それそのものが墓標のように、誰かから風の噂の様に流れてきて知る知人の死について描かれる作品が殆どですが、其処には悲惨さが無く、心の何処かにひんやりとした秋口の風が吹くような、そんなちょっとした寂しさが、優しく軽妙な筆致で綴られています。小説とも随筆とも思える曖昧さも居心地の良さかもしれません。
上質な時間を楽しめる1冊でした。
あっ、大寺さんもでてくるよ!
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2018年7月5日
- 読了日 : 2018年7月5日
- 本棚登録日 : 2018年7月5日
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