おしゃれな文体だな…。
装丁が女性向けっぽかったので読んでみたら別の意味で女性向けだった。
男性同士の恋愛は「許されない恋」「人に言えない恋」という背徳的な要素がより感情にブーストをかけ、だからこそ人気のあるテーマだが、
昨今の空気からしてそういうエッセンスが薄れつつある気がする。
段々と異性同士の恋愛と同じような扱いになっていくのだろうかな。
愛人として一生を終えた母が死に、母を囲っていた父も死に、姉も死に、残ったのは自分と姉の夫(義兄)だけ。
会社では諸事情により役員の便利屋として秘密裏に行動しているため、他の社員からは何も仕事をしていないと誤解され蔑まれ、それを釈明することもできない。
そうした環境に依る主人公の精神的な脆さが随所に現れていて良かった。
最初は不思議な出来事から始まり、叶わない恋へと主軸が移り、悲しくも穏やかな話か?と思いきや主人公の不幸な境遇が明らかになるにつれ物語のテイストがどんどん息苦しくなっていく。
登場人物を出来るだけイニシャルで表記する(必要なタイミングでは本名が明かされるが、それ以降もイニシャルは継続する)のが、主人公が周囲の世界から一歩引いた形で存在せざるを得ないことのあらわれのような気がして切なかった。
文体がなんか全体的におしゃれだったな。
他の作品も読んでみたい。
普段使わないような言葉が頻出するので語彙が増えそう。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年9月20日
- 読了日 : 2020年9月20日
- 本棚登録日 : 2020年9月20日
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