初めての町田そのこさん。ものすごくよかったです。新聞で見たのですが、町田さんは自分の好きな作品を全文写して独学で学んでいたとありました。
それでいてこれだけの完成度の高い作品に驚きです。
本作は圧倒的な優しさで包まれる連作短編集です。
人生という大きな海を泳いでいく登場人物たち。それぞれが繋がり支えあって生きています。離別、ネグレクト、近親者の死、性的マイノリティ、放浪癖、DVなど生きづらさも様々です。彼ら彼女らのやり取りの温かさが生きることの肯定や癒しを読むものに与えてくれます。魚になって温かな水のなかを泳いでいるような心地よい空間のとりこになってしまいます。
短編の全てに共感してしまったのですが、私の場合は放浪癖です。「ここではない何処か」を求めてさ迷う宇崎と唯子。自分のことを誰ひとり知らない街を彷徨します。私も知らない街を歩くと解放感で爽快な気持ちになったことを思い出しました。こうした一人旅も悪くはない。
ただ、宇崎や唯子ほどになると、癖(へき)としか言いようがなくなる。きっと自分をリセットし続けているのではないでしょうか。
一人ひとりの登場人物が、優しい。それはたくさんの悲しみを知っているからこそ見せる本当の優しさだと思います。だから、作中のやり取りに心が温まります。読後感がとてもよいです。
すいびょうさん、素敵な本の紹介ありがとうございました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年2月11日
- 読了日 : 2023年2月11日
- 本棚登録日 : 2023年2月7日
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コメント 2件
あゆみりんさんのコメント
2023/02/11
ちゃたさんのコメント
2023/02/12