教養の人類史 ヒトは何を考えてきたか? (文春新書 1431)

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  • 文藝春秋 (2023年10月20日発売)
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知の探求とは何か?それは何の役に立つのか?
それを読者に考えてもらおうと、材料を提供してくれる書なのかと思いながら読み進めた。

知の欲求に囚われたような巨人がいる。
身近な人として、立花隆、司馬遼太郎、井筒俊彦、松本清張が紹介されているが、古くはBC500年、あるいはBC800年からBC200年頃、中国、インド、ペルシア、パレスチナ、ギリシアにおいて、時を同じくして偉大な思想家による現代にも通じる思想が生まれた。これを枢軸時代と名付けている。

人類の進化を動物と比較しながら、いかにヒトとは特別な存在なのかを表し、そのヒトは宗教・哲学・芸術、そして科学を生み出してきたと話しを進める。
しかしだ、文明の発展は地球を破壊し、勝ち組と言われている新自由主義は、人間性や公平性に挑戦していると展開し、暗い気持ちにさせられる。
ただ我々は、教養を身につけることで矛盾を解決できる、と述べていると理解した。

J.Sミルは、教養を学ぶことによって、「期待を決して裏切ることのない利害を超越した報酬」が得られる、と言う。その「報酬」の中身とは、我々が人生を生きていく中で、心惹かれ、もっと知りたいと思うことが、より深く、よりバラエティー豊かなものとなることだと言う。
そしてそれは、人生を十倍も価値あるものにし、しかも生涯を終えるまで持ち続けることのできる価値である。
単に個人的な関心事は年を経るに従ってその価値は減少していくが、この価値は減少することがないばかりか、増大してやまないもだ、とも言う。

今世紀の教養として
一人ひとりの人生にとって、家族や友人たちなど現実の存在が生きがいになってくれることは言うまでもない。そうした個人の一回かぎりの体験や思い出を普遍化し、時や空間を超えて離れた人々とも共通の思い出として表現化されたものが文学であり、歴史であり、芸術であり、宗教なのだろう。これを味わうことによって個人の体験やその思いが多くの人にも共有され、追体験される。これは人間にそれだけのイマジネーションがあるからだ。私たち一人ひとりの人生にとって、そうしたものはどうしても必要なものなのだ。
とある。共感できた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年2月18日
読了日 : 2024年2月18日
本棚登録日 : 2024年2月18日

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