教育現場は困ってる:薄っぺらな大人をつくる実学志向 (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社 (2020年6月15日発売)
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本棚登録 : 279
感想 : 28
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楽をして学ぶことと、学ぶことか楽しい、は違う—

知識偏重型からの脱却、詰め込み型の入試からAOや推薦入試への移行が進みつつある日本。
大学教育に携わる著者が警鐘を鳴らす。若干保守的な考え方であると感じたが、内容には概ね賛成できる。

本書の中で特に重要だと思われたのは、国語における実用文教育へのシフトチェンジに対する批判だ。実用文とは契約書や規約等の読解力になるわけだが、文学や評論ではなく実用文の読解がこれからの国語教育の中心になるとは恐ろし過ぎる。

確かに契約書等を読む論理的読解力は重要だ。しかし、言葉の力は思考力やものの感じ方に強く影響する。中学生や高校生の折に一流の文学や評論に触れることで感性や表現力を学ぶことはその人の人生全体に大きな影響を及ぼす。それに教科書で読んでみて、続きが気になって、読み漁った本もたくさんあった。国語の時間はそんな出会いの場としても大事な筈だ。
実用文しか読めず、文学も評論文も読めない学校教育は。。。

しかしながら、著者の欧米文化にたいする浅薄な理解はすこし目に余るものがあった。一つ一つ挙げるとキリがないが、日本と欧米文化の比較はことごとく的外れであった。例えば欧米は自己中心の文化で、日本は間柄の文化、としているが、少なくとも私の周りでは欧米人の教授の方が間柄を大切にして、かなり気遣い上手でTPOにあった絶妙な言い方をしてくださることが多かったりする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年8月8日
読了日 : 2020年8月8日
本棚登録日 : 2020年8月8日

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