代理母、はじめました (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社 (2021年2月20日発売)
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本棚登録 : 1300
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『代理母、はじめました☆☆』って軽いタイトルとは裏腹に、ヘビーな内容だった。
タイトルの軽い感じから、代理で子供を育てるあったかい話かな、と思っていたら、代理出産のことだった。あったかくはない。

2040年、地震や噴火などのため主要機関が長野など内陸部に移転し、廃墟と化した東京が舞台。

大金が稼げると義父にそそのかされて、初産で代理母を経験させられた16歳のユキ。
女性だからと医学部受験で弾かれた経験をもち、男性優位社会に心底辟易し、なんとしてでも女性を守ると強く決意している産婦人科医の芽衣子。
この2人の視点が交互に描かれる。

ユキは、貧乏生活から絶対にのし上がってやるという強い決意で、家を出てゲイのミチオとまさかの代理母ビジネスを始める。
芽衣子は価値観の合わないジーサン院長の病院を退職し、代理出産を希望する女性に寄り添う女院長のもとに転職する。

現代の日本の格差社会やおかしな親子制度を絶妙に皮肉っていた。
それにしても未婚で出産を希望する女性ってそんなに多いんだろうか。ましてや子どもが嫌いなのに子供を持ちたいという人までいる。
「子どもがいてこそ女性は一人前」という価値観はとっくに古いとは確かに思う。

代理出産をお願いする人の側の気持ちも、代理母になる人の側の気持ちも、共感できる部分はあったが、どうして代理母で嫌な経験をしたはずのユキが代理母斡旋ビジネスに積極的になったのかは最後までいまいち共感できなかった。
ユキが多言語を理解でき、覚えたことは決して忘れない「ギフテッド」という特殊な才能の持ち主であるという設定も、ただ物覚えがいいぐらいで、活かしきれていない感があった。

いくら稼げる仕事といわれても、女性は産む機械じゃない。貧困女性を狙ったビジネスだとしか思えなかった…

この表紙とタイトルから、もっとあったかい話だと思ってたなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中央公論新社
感想投稿日 : 2021年6月14日
読了日 : 2021年6月14日
本棚登録日 : 2021年6月14日

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