檻の中の裁判官 なぜ正義を全うできないのか (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA (2021年3月10日発売)
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感想 : 6
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高橋昌一郎氏による「新書100冊」という新書で、オススメの新書100冊として紹介されていたのがこの「檻の中の裁判官」です。

東京の某私大の法学部出身であり裁判には多少興味も有り読んでみようと思いたちました。

弁護士や検事についてはドラマや小説やニュースなんかでその特徴などはなんとなくイメージができますよね。でも裁判官については謎のベールに包まれています。その生態は如何に?という興味ですね。

長年裁判官をしてきた著者が退官して外から見ての裁判官や裁判所への分析、批評、考察がなされており非常に説得力がありました。元裁判官の学者だけあって文章も論理的で、わかりやすい。たまに判決文みたいに回りくどい記述があるのは、ご愛嬌といたしましょう。

裁判官というのは独立して可能な限り他者から影響を受けずに自らの高潔な思想や信条に基づき裁定を行う高尚な判断者というイメージでしたが、本書でそのイメージはぶっ壊れました。崩壊したと言ってもよいです。

裁判官て独立した判断者ではなくて裁判所という閉鎖した組織の中に生きる役人なんですね。司法官僚としての性格が強く、官僚型ムラ社会にいきる住人です。官僚型ムラ社会というのがタイトルに言う「檻」なんですね。まさにいい得て妙な表現だと思います。

終身雇用に年功序列に社命による配置転換や異動転勤などが日本型キャリアシステムと言われますが裁判所もまさにこの日本ならではのキャリアシステムを地で行く組織だということがよくわかりました。

しかもこのシステムは最高裁とその事務総局を中心とする裁判所当局の過酷な統制と管理により裁判官をコントロールします。権力が集中しておりお上意識が如実に残りしかも三権分立で司法に期待される役割である権力チェック機能が働かずむしろ権力補完機構としての側面が強い。

司法がこのようなシステムでがんじがらめになっていることに一国民として強い問題意識を持ちます。
対権力との裁判で権力側に忖度した判断をしたり、冤罪を生み出したりすればそれはもはや民主主義国家とは言えないんだろうと思います。一日も早い裁判所の抜本改革が必要でしょう。

読んでそんな感想を抱きました。








読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2024年3月16日
読了日 : 2024年3月14日
本棚登録日 : 2024年3月1日

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