カヲル回。カヲルの成長を描こうとした本作は、それに成功していると言うしかあるまいと思う。カヲルはシンジの希望と絶望のために存在しているのではない。一人の主体性をもつ「人間」として存在している。
カヲルはかつての綾波を通して自我に目覚める。綾波こそ自我のなかった存在なのに、彼女が大切に育ててきたものを、カヲルは意図せず引き継いでしまった。
カヲルはアニメ版と同様、シンジにすべてを委託する。シンジはカヲルの願いを叶えるわけだが、アニメ版だとシンジの逡巡は静止画像によって表れている。
本巻においては、それを片手ではなく両手に、大切に包み込むように行なう。そこにはここまで育て上げたカヲルへの著者からのリスペクトを感じることができる。
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- 感想投稿日 : 2021年3月14日
- 読了日 : 2021年3月14日
- 本棚登録日 : 2021年3月14日
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