火星からの侵略―パニックの心理学的研究

  • 金剛出版 (2017年11月27日発売)
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1938年10月31日、アメリカで流れたラジオドラマから端を発したパニック騒動。H・G・ウェルズ『宇宙戦争』を基にしたラジオ劇を聞き、火星人の侵略によって大きな被害、多数の死者が出たという話を信じた人が少なからずたくさんいたという。
・放送がラジオ劇であると判断するカギは「批判力」。
・批判力が高い=教育レベルが高いという一定の相関はあるものの、今回のパニック騒動では完全に相関するわけではない。同じ教育レベルであっても、信じた人/信じない人が同じく存在した。
・その場で批判力が発揮されるか否かは、その人のパーソナリティも大きく関係する。パーソナリティ=危険な状況に直面した際の暗示への感受性。被暗示性の指標:不安定、恐怖症、心配の量、自信の欠如、運命論、信仰心、教会への出席の頻度。
・その被暗示性の強弱は、当然ラジオの聴取状況にもよる。信頼できる誰かから聴くように言われたのでラジオを付けた人、完全に信じ切って興奮している人と一緒に聴いた人などは、より暗示にかかりやすい。
・批判力の発揮に関わる事項としてパーソナリティ、聴取状況、そして社会的背景も大きい。1938年は1939年に第二次世界大戦が起こる1年前。第一次世界大戦の記憶と忍び寄る新たな戦争の影がある生活の中で、突然の臨時ニュース(=隕石の衝突)が入り込むというシチュエーションは至って自然だったのだろう。また、火星人の侵略と報じられているそれは、ドイツ軍や日本軍の侵略なのではないか、と思い恐怖した人たちもいた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文
感想投稿日 : 2020年4月19日
読了日 : 2020年4月19日
本棚登録日 : 2020年4月19日

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