現代の歴史研究が果たすべき仕事を明らかにしつつ、二度の世界大戦、共産圏の伸長を背景にしたアカデミズムにおけるペシミズムや保守主義に檄を飛ばす。
有名な警句、『歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話なのであります』は後段で以下のように発展する。
『歴史とは過去の諸事件と次第に現れて来る未来の諸目的との間の対話』
歴史における絶対者とは止まることのない変化なのであって、歴史家はそれ以外の絶対者を斥けつつ常に未来を意識し過去を探究することで歴史記述を進歩させる必要がある。より広い規準で過去を見つめることを可能にする。
進歩史観を過去のものと指摘しつつも、文章の端々から人類の進歩に対する希望を感じとれる。このアンビバレンツな状態を表明するという行為自体が、一つの時代の中で生きる一歴史家である自己を理解するということだろう。
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- 感想投稿日 : 2023年5月25日
- 読了日 : 2023年5月25日
- 本棚登録日 : 2023年5月25日
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