遺伝学の歴史と、そのたびごとに遺伝子の理解がどのように更新されたのかが概観されてゆく。分子生物学の本でなんでこの記述スタイル?と訝って読んでいたが、DNA、mRNA、tRNA、タンパク質のセントラルドグマというお馴染みの図式が説明されたところからが本番。
セントラルドグマ以外にもほかのRNAやら酵素やらが形質遺伝に関わるだとか、ラマルキズムとして片付けられていたはずの獲得形質の遺伝もDNAメチル化によって説明づけられる可能性があるだとか、とにかく遺伝機構(つまりは遺伝子なるもの)の複雑な様相が明らかになっている、らしい。
シュレーディンガー『生命とは何か』をメルクマールに、物理法則をベースに演繹的な推論を(も)用いる物理学者や化学者が、かつて帰納的な実験・観察とその分析に終始しがちだった生物学分野に参入することで分子生物学が生まれるシーンは感動的ではある(pp.109-112)。
しかし最新の展開や著者の見通しを読むに、複製と多様性をなぜか両立させる遺伝(子)の制御構造の探究は、物理学・化学の知見を導入しながらも原理論に進む方向性は(少なくとも本書では)仄めかされておらず、今後の分子生物学の道のりの長さも感じさせる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年11月27日
- 読了日 : 2023年11月27日
- 本棚登録日 : 2023年11月27日
みんなの感想をみる