喜多嶋隆さん初読み。素敵な装丁のイメージ通り、優しい話で温かい気持ちになった。
千駄木は団子坂にある居酒屋が舞台。主人公はハワイ出身の女性ペギー。ハワイの大学を卒業後、表参道の外資系広告代理店の就職が決まり、来日し代々木公園近くに住む。仕事では上司から不本意なデータ改竄などを指示され、結局上手くいかなくなり2年で退職。退職を決めた日、ふと通勤に使っていた千代田線の逆方向で気になっていた根津、千駄木方面に行き、一軒の大衆居酒屋に出会う。居酒屋の店主、その常連のご近所さんのつながりで住む場所も無事見つかり、居酒屋での仕事を通じて地域に馴染んでいく。ハワイの母子家庭での料理の経験が大いに役立ち、テレビへの出演なども通じて居酒屋は繁盛。ハワイに住む日本人の母と鎌倉の祖父母との関係修復などにも取り組む。
近所の人たちが常連のアットホームな居酒屋、地元の人々、下町情緒とお屋敷街のいずれの側面も持つ千駄木をはじめ、ぺギーがここにたどり着く前の表参道の広告代理店、出演したテレビ番組、近所の魚屋の青年が過去に勤めていた総合商社といった都会的な世界、生まれ育ったハワイ、祖父母のいる湘南とさまざまな世界を味わえる。ペギーが店で作る酒のつまみの描写も最高に美味しそう。この小説の雰囲気にとても癒された。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年8月20日
- 読了日 : 2022年8月20日
- 本棚登録日 : 2022年8月20日
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