ペスト (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社 (2021年9月14日発売)
3.73
  • (11)
  • (14)
  • (12)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 262
感想 : 19
4

私にとって,本作は不条理文学でなければ,疫病の文学でもなかった。反抗というよりは不信の文学,といったところか。20世紀以降の傾向として重要な感覚としてメモをする。

本書に文学的価値を見出すとするならば,海水浴のシーンを取り上げれば十分だろう。

複数の証言を仮想的に再現した,群像劇が効果的に誠実さを示していると思う。

評価を-1したのは,現代に求められている像との(自分の中での)乖離感があり,今必読とまではいかなかったことによる。本作は,現代の読者が思うよりも遥かに孤独だ。

最後に翻訳について。それまでの宮崎嶺雄訳 は1969年のもので,さすがに今では読みづらい文章。今回の新訳により,難解さはかなり減り,内容に集中しやすくなっている。これを機に読者層が広まるのはいいことだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年11月1日
読了日 : 2021年11月1日
本棚登録日 : 2021年10月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする