私にとって,本作は不条理文学でなければ,疫病の文学でもなかった。反抗というよりは不信の文学,といったところか。20世紀以降の傾向として重要な感覚としてメモをする。
本書に文学的価値を見出すとするならば,海水浴のシーンを取り上げれば十分だろう。
複数の証言を仮想的に再現した,群像劇が効果的に誠実さを示していると思う。
評価を-1したのは,現代に求められている像との(自分の中での)乖離感があり,今必読とまではいかなかったことによる。本作は,現代の読者が思うよりも遥かに孤独だ。
最後に翻訳について。それまでの宮崎嶺雄訳 は1969年のもので,さすがに今では読みづらい文章。今回の新訳により,難解さはかなり減り,内容に集中しやすくなっている。これを機に読者層が広まるのはいいことだと思う。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年11月1日
- 読了日 : 2021年11月1日
- 本棚登録日 : 2021年10月20日
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