芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

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感想 : 125

戦争末期に集団疎開先の村で、発生した疫病を恐れて逃げ出した村人たちによって、村内に閉じ込められてしまった感化院の少年たちの一週間ほどの出来事を描いた、著者の長編第一作です。太平洋戦争末期の日本が舞台に選ばれた作品ですが、雰囲気としてはディストピア的な不吉さをもつSF小説に近いものを感じ、絶望的な状況に閉じ込められた子供たちの物語としては、『蝿の王』や後年の漫画『漂流教室』なども連想させられます。

隔離された環境での少年たちの結束や対立をはじめとして、主人公である"僕"の幼い弟の振る舞い、疫病で死んだ母とともに残された紅一点である少女と"僕"の関係、朝鮮人集落の少年との交流、脱走兵の存在、村人たちの帰還など、盛り込まれた数々のエピソードと人物描写で、長編としては長くはないこともあって無理なく読み通すことができました。少年たちが共同体を形成する期間については、予期したより短く終わりました。

表題の意味については「仔撃ち」は序盤、「芽むしり」は最終盤で明示されます。終り方については好みが分かれそうですが、個人的には好感を持っています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年9月16日
読了日 : 2020年9月16日
本棚登録日 : 2020年9月16日

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