1960年代にイスラエル諜報特務庁(モサド)のスパイとして活躍した著者が、スパイ入門書の体裁で実体験をもとに諜報の世界を綴ったのが本書です。
スパイの種類(密告者、二重スパイ、特殊工作員、駐在工作員など)、スパイになるまでの経緯と面接でのコツ、スパイの養成方法、諜報活動における女性と金、尋問に際してのアドバイス、刑務所での身の処し方、引退したスパイのその後など、著者の半生とともに、普通は知りえないスパイにまつわる事実のあれこれを窺い知ることができます。
その書名からも興味本位で手に取られることの多いであろう本書ですが、なかには面接におけるアドバイスにある「自慢すべからず、謙遜すべからず」、監獄での処世術としての「完全に他人を信用しない」などといった一般人の生活にも適用できそうな箴言ともいうべき言葉も含まれています。そして終章にある「満足な健康状態で引退できるスパイは相当運がいい」という厳しい事実には、むべなるかなという思いです。
本書には第1章に「スパイ能力」、第6章に「スパイとして異性とのかかわりあいを上手に処理する能力」、第7章に「贈賄能力」をテストするためのチェックシートも所収されています。自身のスパイ適正を確かめてみたくなる方もおられるのではないでしょうか。ちなみにわたしのスパイ能力適正は残念ながら、「あなたは普通並みで、ほとんどの人がそうである」と判定されました。
余談ですが、第八章「大きな嘘には小さな真実をまぜよ」を読む限り、佐々木倫子の漫画『ペパミント・スパイ』も本書を参照しているのかもしれません。
- 感想投稿日 : 2020年8月8日
- 読了日 : 2020年8月8日
- 本棚登録日 : 2020年8月8日
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