裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち

著者 :
  • 太田出版
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感想 : 23

「これは、私の街の女の子たちが、家族や恋人や知らない男たちから暴力を受けながら育ち、そこからひとりで逃げて、自分の居場所をつくりあげていくまでの物語だ」

故郷である沖縄の大学に教員の職を得た著者が、当地で若いシングルマザーたちに聞き取り取材を行ったもの。2012年から2016年までの取材期間で、計6篇。巻末には調査記録としてインタビューと読み合わせの日程も掲載されている。また、多くの取材での協力者として、同じく沖縄に密着した社会学調査(『ヤンキーと地元』など)に携わる打越正行氏が同行している。

取材対象となった十代から二十代前半の若い女性たちは生育環境に問題を抱えるケースが多い。そしてかつてのパートナーで、子どもの父親である男性から暴力を受けた彼女たちは、数少ない選択肢からキャバクラ勤務や「援助交際」によってひとりで子どもを育てる道を選ぶ。他の沖縄関連の著書で示されていた、濃厚な家庭関係、先輩後輩関係の重視、男性を立てるといった当地の特色は、本書に登場するような若い女性たちにとってはハンディとして働くケースが多いように見えた。

一歩引いた視点から対象を観察するタイプの聞き取り調査とは違い、著者が感情をあらわにすることも珍しくはなく、ときには対象となる女性の問題解決のために積極的に働きかけもする。女性たちが受けた、集団レイプも含む男性たちからの暴力や無責任な態度には憤りを感じ、やはりいたたまれない気持ちになる。同時にただ陰惨なだけではなく、著者とのやり取りなどをはじめとしたユーモラスな場面にはクスリと笑わされ(一部、同行の打越氏のコミカルな描かれ方にも笑う)、ときに現れる彼女たちに手を差し伸べる名もなき人びとの存在や、周囲の援助を受けながら幸福を見出していく過程には心温まる。ときには叙情的な著者の語り口も相まって、感情を動かされることの多い調査記録だった。

通読して、あとがきにある「私もまた、彼女たちと同じような立場に立たされれば、同じように振る舞うのではないか」という著者の言葉に共感をおぼえる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年6月19日
読了日 : 2021年6月19日
本棚登録日 : 2021年6月19日

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