聊斎志異 (岩波少年文庫 507)

  • 岩波書店 (2000年6月16日発売)
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感想 : 19
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この岩波少年文庫版には全部で31編の短編(これが本当に短いの!)が収められています。  全編は12巻、494編もあるらしいのですが、我が日本国で比較的入手しやすい岩波文庫の本作であってさえも92編しか収められていないようです。  アジアン・テイストのショートショートといった雰囲気でなかなか楽しめる物語集だと思いました。

でも生まれて初めてこの本のことを知った時は、タイトルが読めなくてねぇ・・・・・。  今でこそ何のためらいも迷いもなく「りょうさいしい」と読めるようになったけれど、中学生ぐらいまでは「ああ、あの柳みたいな字で始まる中国の物語集ね」な~んていう風に記憶していたことが思い出されます。

登場するのは必ずしも人間ばかりとは限らず、幽霊だの妖精だの動物たちが人間とほとんど変わることない「この世に生きとし生けるもの」として登場し、登場する人物と一緒に酒を酌み交わして仲良くなっちゃったりします。  そんなホノボノ感と、死体の首をすげかえるだの遺体を盗むだのというホラーチックな話がゴタマゼになっていて(でも不思議とおどろおどろしさはない 笑)、まあハチャメチャと言えばハチャメチャな話が多いんだけど、例えば風邪をひいて高熱にうなされながら読むには最適なんじゃないかという「夢うつつ読書」向きの本だと感じました。  何せ、KiKi はこれを読みながら夏目漱石の「夢十夜」を思い出したぐらいですから・・・・・(笑)



作者の蒲松齢は科挙の予備試験である県試・府試・院試と呼ばれる3段階の試験を全て首席で突破したにも関わらず、何故か本試験には落ち続けるという経歴の人物だったのだそうですが、そんな経験を反映してか物語に登場するほとんどの人物は科挙の受験生とか作者本人を彷彿とさせる科挙の落第生だったりするあたりがちょっと笑えるのと同時に皮肉みたいなものも感じます。

何の本だったか忘れちゃったけれど科挙を受験するための学問に没頭するあまり精神的に病んじゃった人の話とか、科挙の試験の最中におかしくなっちゃった人の話なんかも読んだことがあるので、何となくその世界に近いような印象もあれば、科挙ってあまり実際的な試験ではなかったため科挙合格者は必ずしも「実務能力」には長けていなかったという話も思い出され、まあこういう空想世界の物語をかき集めるあたり、さもありなん・・・・・という印象もあります。

こういう民間伝承をベースにした古い物語を読むと常に感じるのは、古い時代の夜の暗さです。  暗くて視界が効かない中で聞こえてくる物音、風に揺れるろうそくの火が描き出す揺れ動く影というような舞台背景があってこそ立ちのぼってくる魑魅魍魎の世界。  その中にポツネンと1人置かれたか弱い存在である自分を意識すると、その孤立感・隔絶感が次第に社会における自分の存在感の希薄さとないまぜになっていく感覚。  そういうものが感じられるような気がするんですよね~。  で、そうこうしているうちに幽鬼とであってさえもお友達になれちゃうという摩訶不思議な連帯感とも呼べるような感覚まで生まれてきたりもする・・・・。  もちろん幽鬼とお友達になるためには酒の力も借りなければならなければ、一旦死域に入ったりすることも必要だったりするわけですが・・・・・(苦笑)



さて、最後に・・・・  この本の宮崎駿さんの推薦文は以下のとおりです。



たくさんのお話がのっていて、どれもふしぎでおもしろいのですが、中でも「酒の精」という、ごく短いお話だけでも、この本を読む値打ちがあります。  このお話は、ぼくのものの考え方にとても大きな影響を残しました。  ぼくはいまだに煙草をすいます。  もう50年近くすっていますが、やめようと思ったことはありません。  「酒の精」のお話の、酒のかわりに煙草と入れ替えてみてください。  ぼくの気持ちが判ってくれましたか(笑)。


は?  この本を推薦したのは喫煙癖の言い訳のためですか??  しかもこの「酒の精」を何回読み返しても宮崎さんの気持ちはよくわかんないんですけど・・・・・・ ^^;  

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 岩波少年文庫
感想投稿日 : 2013年9月26日
読了日 : 2013年9月25日
本棚登録日 : 2013年9月26日

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