極東国際軍事裁判、いわゆる「東京裁判」に関しては KiKi 自身若い頃から「あの裁判は何だったのか?」という興味を持っていました。 そして大学生の頃にこの本を一度読んだことがあったのですが、今回久々に図書館で見つけたのを機に再読してみました。
正直なところ今回の読書では、学生時代にこの本を読んだ際に感じた大きなショックは感じられず(と言うのも当時の KiKi は東京裁判の実態をほとんど知らなかったのに対し、今回はどちらかと言えば「既知のこと」の再確認という感じだったので)、ところどころでその後入手して何回か観たことがあるこの記録映画(↓)のシーンを思い出すのみ・・・・・という感じでした。
東京裁判
ASIN: B00005F5X3 監督・脚本:小林正樹 原案: 稲垣俊 脚本:小笠原清 音楽: 武満徹 ナレーション: 佐藤慶 講談社
ある意味で日本人の劣等史観のベースにさえなり、「戦争犯罪」という実態がよくわからないものを裁くという摩訶不思議な裁判。 戦争裁判と言いつつも結果的に政治裁判だった裁判。 これを知らずに現代日本を語ることはできないと言っても過言ではない裁判。 そんな裁判がどんなものだったのかを俯瞰するにはよい書籍だと感じます。
それにしてもアメリカという国は面白い国だとつくづく感じます。 世界の超大国で先進国をリードする国であるというイメージだけは強いけれど、大統領選挙(特に予備選あたり)なんかは選挙というよりはお祭り騒ぎみたいなところがあるし、要するに劇場型というか、プレゼンテーション型というか、「人にいかにアピールするか」というマーケティングに近い様な行動には実に熱心です。
東京裁判にしてみても、一応「裁判」という形をとり、日本人の被告にアメリカ人の弁護人がついたりもして、しかもこのアメリカ人弁護人がおざなりな弁護をするのか?と言えば、日本人弁護団がもっと声高に主張してもよさそうなことまで頑張って主張したりもする。 一見、フェアに見えなくもないお膳立てはちゃんとするけれど、裁判そのものはある意味で「結論ありき」だし、多民族国家特有の「落としどころ」的な感覚は実に鋭い。
その後の国際紛争への関与の仕方などを見ていると、東京裁判では「有罪」と断罪されたようなことをあの裁判で裁く側だった国が平然と行っているのを見るにつけ、「戦争に敗れるということは、こういうことなんだな」と思わざるをえません。
実に良書だと思うけれど、残念なことを1つだけ挙げるとするならば、この本の中では占領政策と東京裁判の関連性に関する記述が極めて少ないことだと感じます。 天皇の責任問題という極めてデリケートなトピック絡みで若干は触れているものの、どこか足並みの揃わない検事側の背景やら、そもそもの極東国際軍事裁判開催決定時、その後の裁判中、そしてサンフランシスコ平和条約 & 日米安保条約に至る中でもっとも大きな流れを左右していたのは占領政策にこそあるわけで、そこはもっと触れて欲しかったなと感じました。
最後に・・・・・・
年寄りの冷や水的な意見を1つ。 今では日本屈指の歓楽街の1つとも言える池袋はサンシャイン付近。 かつては池袋に住んでいた KiKi なのであの辺りはよく行ったんだけど、あそこらへん一帯でキャアキャア騒ぎ、遊び呆けている若い人たちを見る度に KiKi は思ったものでした。
「知ってる?? この辺はかつては巣鴨プリズンがあったんだよ?? 巣鴨プリズンって知ってる?? あ、じゃあA級戦犯って知ってる?? 東京裁判は?? ここは東京裁判の時、A級戦犯とされた人たちが収容されていて、結審後は処刑が行われた場所なんだよ。」
ってね。 もちろんだからと言って避けて通れとか、ここでは合掌しろとかそんなことが言いたいわけではありません。 せっかくできたサンシャイン60ですから、そこを平和的に使用し、多くの人が楽しい思い出を作る場所になるのはそれはそれでいいことだと思います。 でもね、何となく、何となくではあるものの、単なる遊び場という意識のみならず、その土地にまつわる日本の歴史を知って欲しいなぁと思わずにはいられないのです。
- 感想投稿日 : 2014年9月29日
- 読了日 : 2014年9月20日
- 本棚登録日 : 2014年9月21日
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