絲山作品は,男女の関係を描いたものが多いが,「孤独」というものを絶妙なタッチで描いている。
愛におぼれるでもなく、孤独にひた走るのでもない。
すぐそこに人肌の温度が感じられるからこそ、孤独が輪郭を表すのだ。
登場人物はみな,「人間は孤独である」ということを真っ向に捉えている。
孤独というものはそういうものだ。
彼らはその孤独を紛らわそうとはしていない。
他者のことを考えているようで,結局は自分の孤独について考えている。
それぞれお互いの目を見ているようで,
その視線は相手の目を透き通り、
自分の内面を見つめている。
敦賀の誰もいない海岸で,
みんなが思い思いの方向を,
遠い目で見ながら,
その視線は交わらない。
そんな情景が思い浮かぶ。
ファンタジーが,「孤独というのは人間の心の輪郭」のようなことを言っていたのが印象的だった。自分の中で,絲山作品ベスト1。
自分が本当にそう思っていないことを、幸か不幸か、書けてしまう作家はいる。
しかし、絲山さんのブログを拝見していると、やはりこの作品は彼女にしか書けないのだと思う。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2007年1月23日
- 読了日 : 2014年7月10日
- 本棚登録日 : 2007年1月23日
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