ほんとうの憲法 ──戦後日本憲法学批判 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2017年7月10日発売)
4.10
  • (2)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 41
感想 : 8
5

憲法9条は国際法との連続性の中で解釈するのが最も妥当、というシンプルで力強い主張。完全に同意。

今までなぜこういう合理的な憲法解釈ができなかったのかを丁寧に論じている。大陸法の理論で英米法を読み解くからああなる。立憲主義の定義もおかしい。ロマン主義的な憲法解釈を喜劇的とまで言う。そして、偉い憲法学者があぐらを書いていた東西冷戦のつかの間の平和は終わって久しい。

ロシアのウクライナ侵攻で、自称「知識人」がことごとく的はずれな分析をして、事実上ロシアの味方になってしまうのは、そういう過去の稚拙な論考の名残。

日本国憲法の9条は先進的な平和憲法ではなく、戦争を違法として力による現状変更を禁じた国際法と同じ水準にある。過去に国際法を破った日本は、国内法にそれを記すことで国際水準に追いつくことを目指した。今や完全に追いついている。

ここから、自衛隊も他の国の軍隊と同じことができるはずだとする。完全に同意。そして、他の国の軍隊も自衛隊と同じように、国権の発動たる戦争や武力による威嚇は国際紛争を解決手段として行うことはできない。

湾岸戦争後の機雷除去任務から自衛隊の海外活動が始まるが、これは国内の議論が熟していなかっただけで、最初から国連が要請する軍事活動に自衛隊は参加することができた。

世界情勢は厳しくなる一方であり、国連決議に基づく武力制裁の任務も自衛隊に課せられる可能性がある。もはや「憲法があるからできません」とは言えない。今の日本の立場では言うべきでさえない。憲法の前文にある崇高な理想のために、より一層の努力が求められるし、それに応えなければならない。

自衛隊の活動は純粋に、国際法に基づき、国際協調を志向し、人道と日本の安全と国益の観点から選んでいくべきとなる。

9条のパリ不戦条約と国連憲章との共通点に気づいてから、「自衛隊も他の国の軍隊と同じことができる」という結論に至ったが、まったく同じ結論が導かれていた。それも深い論考の後に。9条の解釈について今までで一番強く同意した。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2022年5月13日
読了日 : 2022年5月13日
本棚登録日 : 2022年5月13日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする