ウェストファリア体制の意味が良くわかる。ちょっと乱暴だけど分かりやすい語り口で説明がなされている。
グロティウスがやりたかったことは、殺人が当然だった世界、すなわち、異教徒や異宗派は人でないから殺して良いという世界から、暴力の独占主体を国家(王様)にして、貴族や教会から暴力を取り上げて、その同格の国家間での必要悪としての戦争というものを発明したというのが倉山先生の説明するウェストファリア体制。
その一員たるには、自ら身を守る力が必要であり、力で対抗できない近代の非欧州圏には適用のないものだったが、大日本帝国がそれをグローバルなものにしたのにも関わらず、自らの滅亡によって弱肉強食の世界を生み出してしまった責任があると喝破。
国連憲章によって戦争が違法化されたが、それによって管理された戦いというのが無くなり、紛争やテロという名の前近代に逆行しており日本も必要な備え、すなわち軍備が急務と指摘。
また、民族自決というウッドロー・ウィルソンの考え方は人類に悲劇をもたらした呪いというのもなるほどなと。
ウィルソン狂人論について、筆者は書いているようなので、それも読んでみたい。また、田中明彦先生の新しい中世という20年前に読んだ本も、ウェストファリアから脱して国家以外が力を持ちつつあるという話だったが、趣旨は同じだと思う。これも読み返してみたい。
中々に考えさせられる本だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2021年5月12日
- 読了日 : 2021年5月12日
- 本棚登録日 : 2021年5月12日
みんなの感想をみる