機龍警察 白骨街道 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房 (2021年8月18日発売)
4.18
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本棚登録 : 491
感想 : 64
5

それにしても異常気象が続いてますね
日本だけじゃありません
それこそ世界中で

これはもう完全に地球が悲鳴をあげてると思いませんか?
何かしなければ、あるいは何かをやめなければ地球はこのまま悲鳴をあげ続け、人間社会にさらに牙をむくような気がしますが、世界各国の足並みは全くもって揃いません
うーん、どうしたものか…根幹的なところではみな一致してると思うんですけどね

そう『地球大切 各国賛同』なんちて

さて『機龍警察 白骨街道』です

世界各地の紛争地域が登場する機龍警察シリーズですが、シリーズでは紛争には必ずといって絡んでくる宗教についてもよく記述があり、特に仏教から着想を得たような記述や世界観、思想なども大きな特徴と言えます
そんな機龍警察シリーズに満を持して紛争地域であり仏教国でもあるミャンマーが物語の舞台として登場します
こりゃもう面白いの確定じゃないか

そしてミャンマーといえば今作の題名ともなった「白骨街道」です
これを題名としたことにどんな意味が込められてるんてをしょうね

さらに「白骨街道」といえば日本軍史上最も愚かな作戦と言われる「インパール作戦」です
(作戦の内容についは作中で触れられていますので省略します)
んで「インパール作戦」といえば…
そうです!あの朝の連続テレビ小説「エール」で主人公 古山裕一が慰問に行った時に進行中だったやつですよ!
そこで裕一は恩師藤堂先生と再会し、藤堂先生は裕一を守り敵弾に倒れるのです
もう涙、涙ですよ!

あ、脱線しすぎた
こんなに長いこと本筋と違うこと書いてるって凄くないですか?(なんの自画自賛やねん)

よし、じゃあ本筋に戻ります

今回気になったのは各章のタイトルでした
畜生道、餓鬼道、修羅道、地獄道、人間道と続きます
仏教でいう六道輪廻ですよね
ものずこい簡単に言うと、仏教では6つの世界があって、たくさんいいことすると次に転生するときにいい世界に行けるよ、悪いことばっかしてると次はたいへんなとこに飛ばされちゃうよっていう考え方です

で、実際に読み進めていくとこれが実によく考えられてるんですよね
当たり前ですが章の内容とタイトルちゃんとリンクしてるんです
例えば第一章 畜生道では偏見や差別に基づいて他者を虐げる畜生たちの存在が描かれ、第二章では金の亡者や人を蹴落として出世しようとする醜く飢えた餓鬼たちが描かれるといった具合です

もう相変わらず凄いや月村了衛さん、絶対六道のほうが先に発想としてあったと思うんですよね
それにあわせて小説を仕上げちゃうんですよ

そしてそして気になるのが六道に対して章は5章しかありません
そうなんです「天道」がありません
めっちゃ気になりません?
なぜ月村了衛さんは今回「天道」を描いてないのか?

ウィキペディアによれば「天道とは天人が住む世界。天人は空を飛ぶことができ、享楽のうちに生涯を過ごす。」とあります

姿が言うように、この世は哀しく理不尽なことばかりで、「天道」なんてどこにもない!と伝えたかったのでしょうか?
いえ、そうじゃないと信じたいです
いつかこの素晴らしいシリーズが終わりを迎える時にこそ「天道」が描かれるのではないのかと思います
少なくとも「天道」へと続く道を沖津部長は私たちに見せてくれるのではないでしょうか
そしてそこには空飛ぶ龍騎兵がw
(つまり龍騎兵こそが天人というね)


そんな期待をもってこれからも月村了衛さんの機龍警察シリーズを楽しみに待ちましょうじゃあ〜りませんか(最後のチャーリー浜で台無し)


読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 月村了衛
感想投稿日 : 2022年9月16日
読了日 : 2022年9月20日
本棚登録日 : 2022年9月14日

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コメント 11件

松子さんのコメント
2022/09/16

ひまさん、おつかれさま(^^)
いっつも、ひまさんがどんな風にギャグを考えて作っていくのか教えてほしいぃ
いつか、ひまさんみたいなギャグを私も作ってみたいのっ
こんど、コツ教えてくださいっ

ひまさん、レビューすごい!
読んでいて、なるほどぉってうなずきながら読んだっ
よくガイドブックってあるけどガイドレビューだぁって思う!

ひまさんに六道の話を聞いて、調べたよ!って、ウィキペディア見て、ふんふん、なるほどぉ〜_φ(・_・って考えてただけだけど。

うんとね、私が感じたのは
天道の解説見た時に、すごく怖かったの。
天を飛び、享楽の人生を送るけれど死を迎える時に5つの変化と苦しみが現れる。体が汚れて悪臭を放ち、脇から汗が出て自分の居場所を好まなくなり…って、書いてあって、えぇー!って思って。ありゃ、これ毱絵ちゃんみたいって思っちゃって。毱絵はいま一族を一掃して権力と富とあらゆる力を手に入れて、天女が空飛ぶみたいに享楽の時を送っているけれど、最後は五衰に苦しむのかなぁって…。

最後の章のタイトルは人間道になっているけれど、毱絵の姿から、天道の意味もあるのかなぁって思ったんだ。
うーん、説明下手くそで意味が伝わらなかったらごめんなさい。

白骨街道は読み終わったあとに、面白いよりも(←すっごく面白かった!)
特捜メンバーの苦労が報われなかったような気がして、しかも白骨街道やミャンマーの紛争の話で、しゅんとなってたんだけど、
ひまさんの、六道の話で、『そんな考え方があるのぉー‼︎』って元気になった!
みんなで読むと、自分の感じた事に囚われずに、色々な考えを教えてもらえて、機龍警察の世界が広がって、やっぱりいいなぁと改めて思いました。
ひまさん、だーさん、いつもありがとう(*´∀`*)

コメント、また長くなっちゃって、ごめんなさーい!

darkavengersさんのコメント
2022/09/16

ひまわりめろんさん こんばんは。

ひまわりめろんさんのレビュー、松子さんのコメントを読んで自分も天道に関して考えてみました。
機龍警察における天道とは〈敵〉のいる世界(場所)。天人とはそのボス(首領)の事で今は享楽に身を任せ好き放題やっているけど、いずれ特捜部によって全てを失い滅んでいくのではないかと思うのですが.......
なので、ひまわりめろんさんが書いているようにシリーズ完結の時に天道は書かれるのかな?と思います。

ひまわりめろんさんのコメント
2022/09/17

そうかー
なるほど二人は「天道」にあまりいいイメージを持たなかったんかな
天人をいわゆる天上人(漫画ワンピースでの天竜人)のようないわゆる上から人々を支配するみたいな感じかな
そして現世の中で自分たちの価値観での居心地のいいところ=天道を作り上げようとする人たちこそが〈敵〉であると

すでに天道は描かれるていると
で、多分ダークさんは今描かれるている〈敵〉に都合のいい天道は最後には特捜部によって滅び、本当の天道が示されるって読みなんかな?
合ってる?合ってると思う

いやいや、いいね
みんな違ってみんないい!

感想もそうなんだけど、天道の解釈も違っていいし!
ダークさんの視点すごくいいな
その天道の解釈の違いというか、それぞれの理想郷って違うってことこそが物語の中に対立軸として据えられてる

ミャンマーにおけるロヒンギャと国軍もそれぞれの「天道」に大きな隔たりがあることで生まれた悲劇なのかもしれなー
その違いを描くのが機龍警察なんかな?なんてことを二人のコメントを読んで思ったよ

ひまわりめろんさんのコメント
2022/09/17

まだまだ語り尽くせぬなー
ミャンマーの軍事クーデターと今作のからみとかね
時系列で言うと軍事クーデターは2021年2月で今作の発売が8月なんで、クーデターが発生したときにはお話はほぼほぼ出来上がってたんと思うんよね
急遽話の結末変えたんかな?とかね

あと気になりのはなんと言ったって十二神将ですよ!
私激推しのクワンですよ!
これも語りたい、いっそZOOMで語りたいw

そしてダークさんのレビュー楽しみだなー

松子さんのコメント
2022/09/17

ひまさん、だーさん、こんにちは♪
そう!そうなんです!
仏教の天道•天人=ワンピースの天竜人=機龍警察の『敵』みたいな感じなんです!
(ワンピースはまだ空島までしか読んでないけど(^^;;)

そして、だーさんの視点すごいです!
そうですよね、敵と特捜部の最後の戦いの時こそが本当の天道が書かれるときっ
うぅぅぅー、おもしろいぃぃー!

おもしろいですっ!
ひまさんの六道の視点から始まって、
だーさんの天道の解釈! たのしぃーです!!

ロヒンギャと国軍の『天道』の隔たり。
なるほどぉ、お互いの求めるものの大きな差からの悲劇…なるほどぉ!深いです!

そして、、ミャンマークーデター…。
ミャンマーのことは機龍警察を読んで知ったので、詳しいことは分からないけれど、お2人のお話きいて、ふんふんと勉強しますので_φ(・_・zoomするときは教えてくださいねー(^^)

はぁ、たのしっ!

あっ、あと十二神将…クワン‼︎
あのクワンの登場のしかた、
うぇぇぇー!くわーん!って心で叫びましたよ
軍や警察に属さない鬼機夫が3人で、クワンがその1人。あと2人出てくるのかなぁ?とか
クワンの過去にチラッと触れるところとか!

あと姿さんがSNSに弱味を握られているところとか。契約の更新とか!
はぁ、もう気になるところがてんこ盛り過ぎて
困りますっ

白骨街道は2021年8月に発売されたんだぁ
じゃぁ、続きはまだまだ先ですねぇ(;_;)
すでにドラロスです…

松子さんのコメント
2022/09/17

あっ!そうだ!
ひまさんに、聞きたかったこと!
機龍警察のコミック版読みますか?
わたし今悩んでいて…。世界がかわっちゃうかなぁ?って。ひまさんはどうしますっ?

あっ!あとぜんぜん違う話なんですけどね、
だーさんが紹介されていた『飯を喰らひて幸を告ぐ』息出来ないくらい笑いましたっ!
近々レビューあげますねぇ(^^)

darkavengersさんのコメント
2022/09/17

ひまわりめろんさん

「本当の天道が示される」、いやあそこまでは考えてませんでした。
でも、それも有りですね。

機龍警察コミック、原作で自分なりのキャラクターのイメージが固まっているとコミックのキャラクターにはついていけないかもです。
でも、試しに読んでみてもいいかと。

松子さん、「飯を喰らひて~」読んだのですね。
今、自分一押しのグルメギャグ漫画です!
レビュー楽しみにしてます。

ひまわりめろんさんのコメント
2022/09/17

いやあ『未亡旅団』から『狼眼殺手』まで3年半、『狼眼殺手』から『白骨街道』まで4年かかってるからね
物語の緻密さを考えたらしょうがないのかもだけど次は2025年とかになる計算…
ドラロスももちろんだけど一緒に読んで感想を言い合うのが思いのほか楽しかったから、そっちのロスが凄いよきっと
また何かでやれたらいいね〜

コミック版は今のところ特に読みたいとは思わないかな
理由は…なんとなくw

松子さんのコメント
2022/09/17

2025年…_| ̄|○
泣いていいですか(;_;)
あぁ、そうだよね、こんな凄い作品そんな簡単に出ないよね…
機龍警察ロスに、ドラ友ロス…( ; ; )

うんうん、ひまさん、また何かみんなで楽しめる本があったらぜひ一緒によもー!読みたーい!
ほんと楽しかったんだもん!(^^)

松子さんのコメント
2022/12/30

ひまさん、こんにちは(^^)
今年はブクログを通して、ひまさんと知り合って、まさか一緒に機龍警察シリーズを読めるとは思いませんでした!

作者の思いに触れたり、本ってそんな風に読むんだって感動したり、色々な事をひまさんから教わりました。
濃厚で充実して楽しい時間をありがとうございました!
また来年もどうぞお願い致します(^^)

ひまわりめろんさんのコメント
2022/12/30

まっつん
こんばんは

こちらこそありがとうだよ
すごい楽しかったねぇ
そしてこんなに楽しい時間を与えてくれた『機龍警察』と月村了衛さんに改めて感謝だね
まっつんやダークさんという語り合う友に恵まれたのももちろんだけど、すべては熱く語り合える底力を持った作品あってのこそだと思うからね
そういう意味でもこの作品に導いてくれたまっつんに大感謝だわ

『機龍警察』はまだまだ続くし、他の作品でも語り合えることがたくさんあるだろうから来年もよろしくね

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