愛の顚末 純愛とスキャンダルの文学史

著者 :
  • 文藝春秋 (2015年11月13日発売)
3.57
  • (2)
  • (11)
  • (9)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 95
感想 : 11
4

梯久美子さんの「この父ありて」で、作者の「目」に感服してので、他の本も読んでみた。
後半になるにつれて、作品を読んだことのない人が次々と登場するので、記憶に残りにくいのがとても残念。(自分の浅学のせいなのだが)
こんな文学者がいたのだ、という驚きと発掘してくれた作者にやはり感服。
一番印象に残ったのは、寺田寅彦の3番目の妻「志ん」だった。この時代にこの奔放な生き方。この人はかなり深いところを生きたのではないかと思わせる。寅彦が負けているところが微笑ましい。こんなふうに、世に出た夫の陰で豊かで才能ある妻たちが確実に生きてきたのだなあと、その存在にしみじみする。
最後に登場する吉野せいは、夫なき後、76歳にして、その才能を世に知らしめた、「間に合った」女性。この人を最後に登場させるなんて、梯久美子さん、ホントにいいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年3月7日
読了日 : 2023年3月7日
本棚登録日 : 2023年3月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする