黒猫

  • 2012年9月27日発売
3.32
  • (14)
  • (35)
  • (53)
  • (14)
  • (5)
本棚登録 : 372
感想 : 53
4

絞首刑を目前に控えた殺人犯の奇妙な告白。
心優しき妻と、愛する動物たちに囲まれて質素に生きていたはずの男が、いつのまにか黒猫の影をもった悪魔に追い詰められて殺しに手を染めるまでを一気に駆け抜ける。

酒癖の悪さが性格を変えたのか、それともこれが男の本性だったのか。
黒猫は悪魔の化身か、それとも男が作り出した幻影か。

「一匹の畜生が私にーいと高き神の像に象って造られた人間である私にーかくも多くの耐え難い苦痛を与えるとは!」
子供の頃からおとなしくて情け深いと知られていた、お前はどこへ言った。
自分で、「自分を情け深い」などと言う男は、信用ならない。
この男には潜在的に悪鬼のような極悪の本性が隠されていたと考えたほうが腑に落ちる。

という訳で、男の狂気があらわになるにつれて、正常と異常の境目が曖昧になっていく感覚が味わえる。

決して後味は良くないけれど、短編ならではの潔い終わり方をするので、読後感は意外にさっぱり。
海外怪奇小説の入門編としてチャレンジするのにちょうど良い本。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 西洋文学
感想投稿日 : 2022年9月1日
読了日 : 2022年9月1日
本棚登録日 : 2022年9月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする