華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF フ 16-7)

  • 早川書房 (2014年4月24日発売)
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「ずっと昔、本を手に持っていた時代でさえ、われわれは本から得たものをまともに利用してはいなかった。われわれは死者を侮辱することばかりに汲々としていた。われわれより先にこの世を去ったあわれな人たちの墓に唾を吐きかけるようなことばかりしていた」

この部分にこそブラットベリのメッセージが詰まっているように感じた。
どんな類の情報にも瞬時にアクセスできる現代にあって、いやというほど情報の量だけが僕たちを圧倒し、情報量が少なかった時代よりむしろそれを活用できていない。
ごくごく身近な例としてはウォークマンにツタヤで借りてきたCDをいちいち取り込ませてた中学生時代とスマホとサブスクサービスでどんな音楽も聴き放題な今。どっちが大切にアルバムを聴いていたかというと中学生時代だった気がする。
もう少し視野を広げて考えれば月並みすぎて申し訳ないけれど失って初めて気づくそのものの大切さということなんだろう。

ディストピア社会の描写としては1984の方が恐ろしいし、設定の奇抜さは素晴らしい新世界の方が優れていたように思うが何故か心に残る華氏451度。何を読んでも家を燃やされない幸福を噛み締めながら読書を続けていきましょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年3月30日
読了日 : 2021年3月30日
本棚登録日 : 2020年10月8日

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