やや古い本だが目は通しておきたいなと思いブックオフで文庫本で購入。100円か200円かで入手したが新品だった。
前半が日記、後半が書評で、日記の中には多数の本が随時紹介されている。
何しろ1日に7冊を読まれるのだから。確か本書の日記の中にも出てきたが、「ここ20年間は1日7冊をキープしている」とあったから、たまに7冊読むのではなく、コンスタントに7冊をキープされていたわけだ。そこには「最近目が悪くなって、本代の元を取るために最後まで読み切るとういうのも、やめることにした」というようなことが書かれていたから、きちんと読み切って1日7冊をキープされていたんだろう。恐るべき読書量だ。
内容は、やはりロシア語通訳(しかも当時のゴルビーやエリツィンからご指名のかかるほどの凄腕通訳)だっただけに、本書の中身の半分はロシア情勢、対米情勢、あるいはロシアの文学や書籍にかかわる内容だった。
当時のロシアの事件・モスクワ劇場占拠事件に触れられたページがあったが、この当時のプーチンの人を人と思わぬ対応は現在と全く変わらないことが確認できる。20年前からあの人格はずっとそのままだということだ。
また、当時の湾岸戦争の記事なども出てくるが、湾岸戦争でのイラクの庶民・子供の犠牲になる様子も描かれており、著されて20年も経過しているのに、人間の行為の本質は変わっていないなという寂しい読後感もあった。
結構分厚い本だけれども、まず当時の情勢などについての評論的なものは、今更あまり読んでもしかたないし、当時の本の紹介も20年前となると新鮮さもなく、すーっと読み流してしまった(巻末に本書に登場する書籍と著者の索引がついているので、興味がわけば後からいくらでもその日記や書評にたどりつけるようになっている)。
やっぱりロシアとアメリカで言えば、ロシアびいきの記述、膨大な知識を背景にちょっと高飛車な評論と感じる記事も少なくもないなと感じたが、興味の傾向として、猫好き、斉藤美奈子好き、丸谷才一好き、そして日本文学好き、性の話好き、、かなという感じがした。
後半のほうで出てきた「もっとも苦痛の少ない外国語学習法」というパートでは、父親の転勤で9歳でいきなりソ連大使館付属八年制普通学校に放りこまれたときからの、まったく言葉のわからないところから生活環境の記録がとても興味深かった。
日本文学に興味をもったのも、この外国生活を強制的に強いられた環境にあったからのようだ。日本文学への興味の持ち方など、普通に日本で暮らしている人間より、よっぽど強いなと感じた。
ロシアに精通し、日本にも興味を持ち、どちらの語学も達者ということになれば、ロシア通訳としてものすごいアドバンテージ。それに加え、1日7冊の読書によるハイスピードのインプットが加われば、もう通訳は天職としかいいようがないなと感じる。
一方、著者は、こうした優れた才能の裏側でがんと闘っていた。本書の1割は、癌と戦う姿にページが割かれている。
- 感想投稿日 : 2023年1月8日
- 読了日 : 2023年1月8日
- 本棚登録日 : 2018年3月1日
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