「自分のために生きていける」ということ―寂しくて、退屈な人たちへ

著者 :
  • 大和書房 (2004年9月1日発売)
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本棚登録 : 271
感想 : 28
5

<概要>
「他人との比較」「理想的な自分を求める」「自分の意志で自分を完全にコントロールできる」をやめることで自分の価値を認め、肯定できるようになる。

<感想>
現代の人間は昔のように簡単に死ぬことがなくなった。生き延びるために必死に働かなくてもよくなり、生物として生きる残ることが容易になった。結果、時間があまり退屈するようになった。

退屈した人間は嗜癖に走り、依存症に陥り、そこから抜け出せなくなるのだ。

本書は依存症から立ち直るための方法として、インナーマザーを認識し、自身が本当に求めているものを自覚し、自立するための考え方のヒントを提供してくれる。

自分を「かわいそう」ではなく、「いとおしむ」と感じる時がくる。

一人でいられるというのは、「孤独」ではなく、他者への依存症が無いということ。


<アンダーライン>
★★★以前は、「生きる」ことはイコール「生き残る」ことでした。みんな、生き残るために必死で生きていました。
★生きることはサバイバルゲームで、いつ死ぬかわからないスリルが日常に満ちあふれていました。誰も「退屈」だなどと悠長なことを考えているヒマはなかったのです。
・私たちにとっては、明日も生きているのが当然のことで、朝、目覚めたときに。「あぁ、今日も生きていてよかった、ありがたい」と心底感じる瞬間など、めったに持てなくなってしまったのです。
・時間はたっぷりあるし、どうもすぐ死ぬこともなさそうで、そこへもってきて「個の自立」です。
・私たちは、この社会の中で、「誰かのために生きる」「社会の要請に沿って生きる」ように強いられています。
・彼女たちは、「アルコール依存症の夫の世話をせずにはいられない」病気なのです。
★★★夫の病気が彼女たちの中身であり、それをなくしたら「自分」というものがなくなってしまうのではないでしょうか。
★共依存症者は、相手につくし、情緒的な支えになり、いつの間にかその人が「自分なしではやっていけない」ようにしてしまいます。
★★★★彼女たちは「困った、困った」といいながら、どこか優越感を抱いています。他人に頼られることで、自分の力を確認しているわけです。
・自分の欲望を知る者、欲望を持つ者を「人間」といいます。欲望がないのは「ロボット」です。その中間に、「欲望はあるが、それが何かわからない」という人がいます。こういう人たちが、自分の欲望を求めて横道にそれていくのです。
・人間は他者との間で、この基本的な承認を求める作業を繰り返します。それを「人生」というのです。
・対人恐怖者は他者に承認されることを渇望しながら、そこで生じる「他者からの侵入」、「見知られる不安」に脅えている人です。
★★対人恐怖者は嗜癖という形でしか、「おねだり」ができないのです。
・共依存者は他者の「承認」を求めながら、「おねだり」もできないままにそれを断念しているのです。人としての承認を相手に求める代わりに、相手の欲望にひたすら奉仕し、そうすることで「他者にとっての奴隷」の役割をとりつづけているのです。
・本人の思い描く「理想的な自己」を保ち、他人の目に、その理想的自己が映るように努力し続けます。
★こういう人にとっての他人とは、理想的自己イメージを保つための小道具に過ぎないので、役に立たなくなれば放り出します。
★自分自身の感情を感じずに、他人の目から見て「よい商品」であろうと努力を続けるとき、人間はロボットとなります。
・けれども彼女たちは、食べ物を憎んでいるのに、やせた体だけ盗もうとする。自分の欲望にそって食べて得た体型は、自分の責任でつくった体型です。
・彼女たちは、食べたいが、太るという責任はとりたくない。
★私は、問題を持って悩んでいる人に「おめでとう」と言うことがあります。「悩みも恵み」なのです。それはきっとあなたに成長をもたらすでしょう。
・「あなたのため」という利他主義のコントロールという、手の込んだパワーゲームです。
・他人の評価で勝ち負けの決まるパワーゲームは苦しい
・他人の評価から降りるということは、共依存的な社会、嗜癖社会のシステムにまきこまれず、自分自身の価値観をつらぬくということでもあります。
★戦争は弾にあたったら死ぬんだよ。勝っても死ぬんだよ。負けても死ぬんだよ。
★「一番の名誉」を求めることに重きが置かれていたら、それが得られなかったとき、注いだエネルギーは全て「ムダ」になってしまう
★★★欲求不満の全くない状態とは「死」を意味します
★★★泥沼から抜け出して、そんなことをやっていた自分を「けなげだった」「いとおしい」と抱きしめられる気持ちになるときが必ずきます。
★★「どうも自分はいつもトランプのババばかりひいている」と思う人は「自分は自尊心が低いのでは?」と疑ってみたほうがいいでしょう。
★★★私たちの体の中に湧いてくるものというと、例えば唾液や屁があります。こんなものが湧くことにいちいち責任をとらされていては、生きていけませんから適当に処理しています。感情もこのように考えてはいかがでしょうか。
★★★嗜癖者は「意志の力」を信じています。自分の困った事態を、自分の力でなんとか治せると思っています。
・(パワーゲームを降りるために)「私はこれでいい」
★★★★★「他人の役に立たない自分は生きるに値しない」という信念があるから、おびえつづけ、無理をするのです。けれども、「他人の役に立とうと立つまいと、あなたは自分の個性に従って、「自分のために」生きればいいのです。
・嗜癖者とは対人恐怖者なのです。彼らが食物やアルコールに手を出すのは、これらのモノとの付き合いであれば、自分が承認される、されないという恐怖から逃れられるからです。
・自分の不完全さを含めて肯定的にとらえることを「自己肯定」というのです。
★たっぷりとして自尊心を持っている人というのは、いいかえれば「比較が少ない」人なのです。比較が少なければ「あの人はあの人、私は私」と思えます。
★★病気の症状も、ひどい状態からよくなっていくにつれて、他人との比較が少なくなっていきます。
・比較をしようという余裕があるのなら、だいぶ状況はよくなっている
★自分の責任で選択をし、その結果を引き受けることこそ大人としての成熟であり、「自分のために生きて行く」ということです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: メンタル
感想投稿日 : 2021年3月5日
読了日 : 2021年3月5日
本棚登録日 : 2021年3月3日

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