ダンス・ダンス!―ユウレイ通り商店街2 (福音館創作童話シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店 (2010年6月20日発売)
3.57
  • (1)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 39
感想 : 4
4

本当は「駅前通り商店街」という名前なのに、
人通りが少なくてうら寂しいので
「ユウレイ通り」なんて呼ばれている商店街の
いろんな「お店の子」が主人公。
お家も近くて、学校でも同じ5年1組、という子どもたちのお話。

1巻目はパン屋の息子武蔵が主人公の
  「ムカシのちょっといい未来」

2巻目は、そのお隣のクリーニング屋さんの娘まゆみが主人公の
  「ダンス・ダンス!」

どちらの主人公も、
特にカッコよくも、美人でもないし、
スポーツができたり、勉強ができたりもしないし、
特に健気だったり、友達思いだったりするわけじゃない。
ごくごくフツーの元気のいい子ども。

そんな、
そのへんにいそうな子どもの日常と、
彼らの心を波立たせるちょっとした事件の数々。
それは、学校でのことだったり、
友達との間のことだったり、
家族とのことだったり。
ささいなことだけど、でも、子どもにとっては結構重大。
自分の情けなさに気付いたり、家族のありがたさに気付いたり、
痛い思いをしたり、泣いたり笑ったりして、
ちょっぴり成長する子どもたち。

うーん、ものすごくまっとうな児童文学だ!
著者の子どもたちやまわりの大人を見る目が暖かく、確かなので
安心して読める。
オーソドックス、と言えばそうだけど、
でも、このまっとうさは貴重。
子ども時代に絶対必要だと思う!

ムカシの話もよかったけど、
わたし的には、まゆみちゃんの話がすごく好き。

まゆみちゃんは、気は強いし、
負けず嫌いでひがみっぽいし、
末っ子だから「してもらうのが当たり前」な子で、
決して「いい子」じゃないんだけど、
著者の語り口が暖かいので、
あ、いるよな、こういう子、と苦笑しながら読める。

あっちでつっかかり、こっちでつまづいて、
ぜんぜんカッコよくいかないんだけど、
でも、ちゃーんと最後には一件落着。
フカクにも、二度ほど涙ぐんでしまいましたよ。
あー、面白かった!

「ユウレイ通り商店街」は、
子ども同士も同級生だけど、
親の世代も、おじいちゃんおばあちゃんの世代も、
子どもの頃からの知り合い、というコミュニティ。

こんな「ご近所付き合い」って、
今では、ほとんど「絶滅危惧種」なんじゃないかしら。
もう、ドラマか小説の中だけにしか存在しないのかもしれないけど、
だから憧れるって部分もあるよね。

小学校3・4年生くらいから読めると思います。
小学校図書館に、ぜひ!

これ、来年の夏休みの課題図書とかにならないかなあ。
おもしろいし、自分だったら?と考えやすいから、
感想文すごく書きやすいと思うよ。

ただ一つ不満なのは、表紙とイラスト。
特に表紙は地味すぎ。
せっかく作品はいいのに、これはないんじゃない?

中身が良心的なオーソドックスな児童文学なんだから、
表紙はもう少しポップにして欲しかったなあ。
一期一会のタカノトモコさんの絵とか、よかったのになあ。
すごーく残念!

だけど、お話はとても面白かった。
他の子どもたちのお話も読みたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童文学
感想投稿日 : 2010年7月27日
読了日 : 2010年7月27日
本棚登録日 : 2010年7月27日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする