書架の探偵 (ハヤカワ文庫 SF ウ 6-10)

  • 早川書房 (2020年2月20日発売)
3.22
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本棚登録 : 198
感想 : 12
3

タイトルからして
「司書 兼 探偵なのかな?」とか
「急に体が小さくなって、たまたまそばの本棚にあった本の作者の名前をつけて探偵をする小学生かな?」とか
色々と想像してましたが、あらすじを
読んで驚く。

SF作品である。

主人公は書架に収められた「蔵書」
ならぬ「蔵者」
生前(?)は推理作家だった男のリクローン

ある女性に10日間借りられて
彼女の殺された兄と
父親から残された"謎の本"についての事件を追うことになる。

死んだ作家のリクローン(蔵者)として生きることの微妙な制約など(純正の人間達からは下に見られている)を挟みつつ、そんなに悩んでる感じも出さず、事件の捜査が進んでいく

登場は人物の会話は、ホームズや
ポアロ(アガサ・クリスティ)を読んでるかの様に、古風な口調、なのに世界は未来
昔の人が想像したSFのような世界観、でもオンデマンド印刷や制約はありながらも
本はまだなんとか残ってる。

蔵者となったモノ達の生活は、見ているとなんだか孤独そうで…やっぱり「本」は読み手がいないと意味がないように「蔵者達」も貸し出されない限りフワフワとした状態、借りられず期間が経過して焼却(本当の死)を待つだけ…
本は大切に扱おう…

・見た目はおっさん、頭脳はおっさんだけどクローン
・古めかしい言い回し、なのにバリバリSF
幾重にも要素が玉ねぎのように層を作る
不思議さが楽しい。

でも口調のせいか、主人公も依頼人も落ち着き払っているような…
何か重要なことを隠してる?忘れてる?ような印象をもってしまい
焦りを感じないのが、良いことなのか最初のあたりは読んでて不安になった。だけども読むにつれてSFっぽい、大きな展開が飛び出してくる。

作者のジーン・ウルフ氏は、この作品が遺作になったとのこと。続編も考えていたらしい。巻末の解説が、作中の作者の遊び心を解説してくれていてこれまた面白い。

「遺作」として読むとさらに不思議。亡くなってしまった作家の代わりに生きながらえている物語を読み、その中には、自分自身がクローンになって生き続けている推理作家の書いた手記としての小説を読むことになる。

リクローンはモノを書くことが
禁止されてるらしいですが、
ジーン・ウルフさん、面白かったんで
クローンになって続編書きません?
(本人はクローンとして、続編に出演する気
満々だったらしい)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年3月18日
読了日 : 2020年3月18日
本棚登録日 : 2020年1月23日

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