太陽・惑星

著者 :
  • 新潮社 (2014年11月27日発売)
3.46
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本棚登録 : 397
感想 : 45
5

読書開始日:2022年1月24日
読書終了日:2022年1月28日
所感
【太陽】
上田岳弘のデビュー作。
かなりおもしろい。
現代で忌避される偶然性、有限性、不公平、恣意その他あらゆる偏りは、将来排除されるだろう。
既に排除され始めている。
偶然性の塊である自然の排除、長寿推進、フェア推進と全てを均す作業がどんどん進んでいる。
その果てが本作の第二形態。
第二形態は全てが、本当に全てが全部インプットされた人間となる。命も無限。なんの感動もなくなる。
そこでやっと、第一形態の素晴らしさ、贅沢に気付く。
そしてそのどちらをも経験したあとに出来る第三形態が太陽のないところで、偶然性を持って生まれ始める。
それがなんなのか、見てみたいと思った。
架空の未来から今の尊さを訴えるかなり素敵な作品。
かなり刺さるものも多かった。
好きな部分を列記(アレンジ有り)
他人の反応から推し量るのではなく、自然な感情として自らのことを美しいと感じた
第一形態(現代)では、慈しみを持つ余裕のないものは現実を正しく理解するしかなく、それによって自殺や通り魔を選ぶ。ある程度の金や、家族を持つものはそれを紛らわしながら生きることができる。第二形態ではそれを魅力的だと感じる。第三形態の復刻を望む。
ドンゴディオンム、田山ミシェル、トニーセイジ、DNAによって受け継がれたものは明晰な頭脳だけでは決して無かった。
【惑星】
第二形態への突入部を描いた。
フレデリックのいうことは全てが正しい。
けどつまらない。
だから最後に精神科医であるわたしが立ちはだかる。
この精神科医すらフレデリックの妄想ではないだろうか。
まわりを全て肉の海に沈めた中で、アッバスアルカンの言葉が最後に屋台骨である記憶に残った。その記憶が妄想の中の精神科医を産んで暇を潰した。最後の暇つぶし。
フレデリック対惑星の構造を作る。
最後は惑星が勝ちオリンピックを観戦した。
読み取りに全然自信がない…
アッバスアルカン「人だけは真実に従う必要なんてない。結論に従う必要なんてない」
真摯に経典作りに励んだアルカンの言葉を信じる。
肉の海は有限性、偶然性の素晴らしさを、気づかせるためのものだった
それゆえの最高製品

【太陽】
太陽は燃える、酸化ではなく、原子核同士の融合
鉄は閾値を越え爆発を繰り返し、最終的には金となる
ミソがつく
出奔
どこかに近づいているような気もしたが、それが好ましい場所なのか
グジャラート指数の上昇は、弱者を苦しめる弱者のみが踊らされる
トニーセイジ、ドンゴディオンム、高橋塔子、どれもが錬金術
心底怯えることで、さぼってきた自己研磨への無自覚な代替
係累
余裕がなくなればどんどん「自分たち」の範囲は狭くなっていく、人種、国、家族、自分
少ない労力でより多くの金を得ようとしている
グジャラート指数が高いと不幸が面白いとなる、死ぬ直前のドンゴは最高値に達した
不老不死はつまり没個性
人類は不老不死を手段として、金の生成を目的とすふ存在だった
自殺した友達のいく先ともといた場所の間に留まり続ける
偶然性とは究極の贅沢品であったと、第二形態人生の永遠の無感動の中で実感をする
有限の時を費やさなければならない彼らの焦り
残念ながらそのようにおもうこともまた、チェックポイントに入っている
能う
他人の反応から推し量るのではなく、自然な感情として自らのことを美しいと感じた
第1形態では、慈しみを持つ余裕のないものは現実を正しく理解するしかなく、それによって自殺や通り魔を選ぶ。ある程度の金や、家族を持つものはそれを紛らわしながら生きることができる。第二形態ではそれを魅力的だと感じる。本作はこれからくるであろう未来から今を羨む物語?
正しく理解するものの最大の敵は太陽
第一次形態に忌避された偶然性、有限性、不公平、恣意その他あるゆる偏りは、第二形態で排除される。第三形態で復刻を経て本当に必要なものが残る
職業に貴賤なし
ドンゴディオンム、田山ミシェル、トニーセイジ、DNAによって受け継がれたものは明晰な頭脳のみではない
【惑星】
一連の流れはすでに決まっており、それに従うのか、自分の意思で実施しているのかわからなくなる
数学言語音楽、これら三つの我々に備わる力が最終地点。
次の来店の呼び水となる一言
人間は満足が欲しいがそれを満たして余暇を過ごせればいいわけではない。どこか未完成だけど満足の予感を常に享受し、先に広がる未来を感じさせるとのを求める。つまり最高満足感を与えるものは最高製品ではない。つまりいつまぇと未完成な状態を際限なく人々に見せつけること
糞みたいに悩む脳を稼働させるカロリーと時間は、誰かのかわいそうな血によって供給される
結局脳直結がコスパ良し
肉の海
ホメオスタシスのもとに人間をつなぐ
形而上的限定を脱ぎ捨てる
最高の製品を作り自分が1人置き去りにされ、最後の決断をしなければならないが、それを望んでいるが望んでいないが望まなければいけない気持ちからすすめている
レイモンドチャンドラー「強くないと生きていけない…優しくなければ生きている資格がない」
精神病
人類は、人口拡張から平等へと向かう。平等には金がかかる。幸福も向上しなければならない。コストパフォーマンスは必須。そうするとこの最高製品に落ち着くわけだ
熱で誘拐するように時間の感覚が溶ける
結局スタンリーは個性をどんどんありきたりなものに変えていく世界からにげたかったのか。だから全てを均す肉の海を作り、自分だけが本物の個性として死ぬことを選んだのか。でもそれがこわかぅた 
他人の関心ごとを突き詰め、その先をみせつけることに快感を覚える下世話な
結論は人間の頭数を調和の取れた状態にすること
人だけは真実に従う必要なんてない。結論に従う必要なんてない
肉の海に沈むことと、死ぬことは全く違うはずだが、こんな時はいつも死者を思う。死ぬことよりも肉の海に沈むことの方が死よりもネガティブな死
オリンピック方式のデメリット、成果物を引き出す能力が環境ポテンシャルを上回る
都市と肉がもつれあう
透明者、人間はもともとそれ

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年1月28日
本棚登録日 : 2022年1月24日

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