友達・棒になった男 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1987年8月28日発売)
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感想 : 81

 安部公房の戯曲集。普段戯曲読まないので最初なかなか慣れないものの読み進めていくうちに世界観にのめり込んでいった。3作収められていて、なかでも「友達」という話が今の時代にも当てはまるような内容で好きだった。ある独身サラリーマンの家に赤の他人である8人家族が押し寄せてきて居座られてしまい屁理屈を浴び続ける。孤独ではいられない、ずっとそこに誰かがいて共感を求められ続けるシチュエーションはSNSと似たようなところがある。クソリプが延々と飛んできているかのような、話が通じない怖さが描かれている場面が一番オモシロかった。たとえば警察がやってきて事情を説明しても主人公1人が言っていることよりも多勢を占める家族たちの意見しか信じられないなど。もしかすると、これは民主主義そのものを揶揄しているのかもしれない。あとがきによると三島由紀夫は「友達」を最高傑作としていたらしい。
 「棒になった男」は三幕構成になっていて1つ目の「鞄」という話がとても舞台らしい話、つまり会話の醍醐味が溢れつつ、そのやり取りは少し不思議なトーンがこもっている。なので、大人計画の舞台ですと言われればそのまま信じそうになるくらい好きなテイストだった。三幕目が表題作の「棒になった男」。地獄の使者が登場するという話の内容自体はファンタジーなのだけど、舞台は新宿の街角、具体的にはアルタから大ガードあたりを想起させられて妙にリアルだった。実際に新宿の街角でこんな会話が繰り広げられているのでは?という気持ちにさえなった。安部公房の日常とそこからの飛躍はクセになる味わいなので引き続き読んでいきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年9月20日
読了日 : 2020年9月20日
本棚登録日 : 2020年9月20日

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